2016年5月7日土曜日

朝ドラにキノコが

 きのう(5月6日)の朝ドラ「トト姉ちゃん」には少し興奮した。ちょっと前から “植物オタク”の帝大生がからむ。ルーペを手に、東京・深川界隈で植物(菌類を含む)の新種探索を続けている。キノコの「ヒメヒラタケ」が登場した=写真。きのうのオチはしかし、植物の「ゲラニウム・カロリニアヌム」で、何日か違いで別人に発見されていた、という話。
 帝大生は伝説の植物学者・牧野富太郎をホウフツさせる。富太郎は独学、現場の人。帝大生も、アカデミズムに属しながらも現場の人、と思いつつ見ていたら、ヒメヒラタケは既知のキノコで、ゲラニウム・カロリニアヌムは新発見。そんな展開になった――。
 
 ゲラニウム・カロリニアヌム発見のニュースをすでに新聞が報じていた。その新聞を、主人公のトト姉ちゃんのすぐ下の妹が持ってくる。記事には牧野富太郎の名があった(きょうは「ぬか喜び」だったことがわかる?)
 
 まず、キノコ(ドラマの)。帝大生が探しているキノコに似ていると、トト姉ちゃんが案内する。祖母が取り仕切っている材木屋の庭に生えていた。が、新種ではなかった。朝ドラが終わったあと、ネットでチェックした。タモギタケのことだった。柄の長い黄色いヒラタケで、私は採ったことはない。が、いわき市内の奥山でも採れる。昔、だれかが猫鳴山で採った話をしたのを覚えている。
 
 もうひとつ。植物のゲラニウム・カロリニアヌムは、和名がアメリカフウロというらしい。北アメリカ原産の帰化植物だ。今では北海道を除く列島の土手や道端に普通に見られるのだとか。
 
 なぜ、深川の木場で新種が――。これは私の妄想だが、木場には国内の木材が集まることと関係していないか。木材と一緒にキノコの胞子や野草の種子が運ばれる。で、そこに根づくものがある。
 
 ヒメヒラタケは、材木店内の庭の一角に生えていた。庭と植え込みの境に敷かれた木っ端から発生した。木っ端がヒメヒラタケの胞子の栄養になったのだろう。アメリカフウロについては、そのころ木材が輸入されていたかどうか、も含めてよくわからない。
 
 朝ドラに刺激されて、階段に積みあげておいた本の中から、水野仲彦著『山菜・きのこ・木の実フィールド日記』(山と渓谷社、1992年刊)を引っ張り出した。この図鑑には、山菜・食菌・木の実の写真のわきに、自分で採ったり食べたりした場所や年月日を書き込める欄がある。
 
 水野さんは郡山市の人で、阿武隈高地、会津の山々、浜通りの海岸と、福島県人には身近な場所をフィールドにしている。昔はこの図鑑を眺めながら目的を絞って山野を巡った。メモだらけのページ(クリタケやアカモミタケなど)も、真っ白なままのページ(コシアブラやタモギタケなど)もある。
 
 5月2日付拙ブログで報告した、夏井川渓谷の隠居のアミガサタケは、『フィールド日記』によれば、2006年4月下旬以来、10年ぶりの発生だった、ということがわかる。
 
 今は、植物(生産者)・動物(消費者)・菌類(分解者)という連環がイメージされているが、昔はキノコも植物として扱われた。そのキノコと植物が「トト姉ちゃん」にどんな彩りを添えるのか――急に本筋とは違ったところで興味がわいてきた。

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