2015年1月2日金曜日

「させていただきます」

 V6が伍代夏子さんの「ひとり酒」でバックダンサーをつとめた=写真。歌が始まる前の白組司会・嵐とのかけあいのなかで、三宅健クンが「伍代さんの後ろで踊らせていただき……」というつもりが、「踊らされて……」とやってしまった。思わず爆笑した。すぐ後ろのイノッチ(井ノ原快彦)が頭をペタンとやったのが、またほほえましかった。

 NHK紅白歌合戦で最も印象に残ったシーンだ。変な敬語、「させていただきます症候群」の実例として記憶されるだろう。
 
 大みそかに広島の甥と娘(短大1年生)が遊びに来た。いわきの疑似孫(中3女子)と母親も来た。娘たちは19歳と15歳。初対面ながらアニメの話で盛り上がり、さっそくフェイスブックの友達になった。
 
 2人の話が半分以上わからなかった。「カン〇〇」(半分忘れた)「〇〇〇〇」(忘れた)といった<4音短縮語>や、「超――」「めっちゃ――」「やばい」が飛び交う。19歳は兵庫県の短大で声優コースに籍を置いている。15歳は小説や宮沢賢治の童話を読んでいる。言葉にはそれなりに敏感な方だろう。
 
「なまってないね」。19歳が15歳を評したのを機に、割って入った。仲間内で通じる言葉も、ジイ・バア、オジ・オバその他、さまざまな世代がまじりあった“社会”では通じないことがある。言葉の遣い方を切り替えられるようにするといいねと、これは老爺心。

「言葉は人だからね」。小さいときから疑似孫に礼儀・作法のようなことを言い聞かせているカミサンが付け加えた。例に挙げたのが「させていただきます」。「~させていただきます」は「~いたします」で十分、過剰な敬語だということを自覚して、という老婆心だった。それから数時間後の実例だ。

 敬語講師山岸弘子さんによれば、聞き手に違和感を与える「させていただきます症候群」には5つのタイプがある。<「さ」はいらない>型もその1つ。

「踊る」の場合――五段活用の動詞は「せていただきます」に接続するから、敬語を遣うなら「踊らせていただきます」だが、「させていただきます症候群」にかかっていると、「踊ら『さ』せていただきます」と過剰になる。「さ」は要らない。三宅クンはそのへんがごっちゃになって言い間違った。「踊らされている」ことも確かだが。

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