2015年1月24日土曜日

NHK東北Z(下)

 阿武隈高地に関する放射能関連情報をネットで検索すると、NHK・東北Zに登場した東大の先生の「高線量地帯周辺における野生生物の生態・被曝モニタリング」報告があった。日本生態学会での放射能汚染研究の概要もあった。
 
 日本勤労者山岳連盟による「山と登山道の放射線量測定結果について」(2012年5月17日付)に興味を持った。わがふるさとの山、例えば大滝根山(1193メートル)、鎌倉岳(967メートル)の線量はどうなっているのか。
 
 大滝根山は最高値1.987マイクロシーベルト/時(1185メートル地点)。ところが、鎌倉岳は705メートル地点で6.256マイクロシーベルトだった。事故を起こした1Fから西に30キロ、国道288号をはさんで南に大滝根山、北に鎌倉岳が向かい合っている。全村避難中の葛尾、飯舘村は鎌倉岳のすぐ北東から北に位置する。
 
 放射線量の測定は震災から半年余あとの、2011年10月から翌年4月にかけて行われた(大滝根山は10月、鎌倉岳は11月)。それから2年後の鎌倉岳の様子を、2013年11月4日付の毎日新聞福島版「ルポ福島 鎌倉岳の空間放射線量」(藤原章生記者)で知った。藤原記者は確かいわき市出身の編集委員だ。1年前、昔の職場の後輩が新聞のコピーを届けてくれた=写真。
 
 アップされた勤労者山岳連盟の測定結果に、月刊「登山時報」2012年7月号に掲載された野口邦和・日大准教授の講演記事が添えられていた。そのなかに、鎌倉岳の「頂上東側の登山道を外れた藪(やぶ)の中で10マイクロシーベルト/時の値を示した。これは測定器上限を超え線量計が振り切れた値である」という記述がある。
 
 毎日新聞のルポ記事に、そのくだりに対応する部分があった。見出しだけ紹介する。「山頂直下『測定不能』から7マイクロシーベルトに」。2011年の測定と照らし合わせると、2年後には線量が減衰したことがわかる。半減期2年のセシウム134が減った結果だろう。にしても、高い。
 
「登山時報」にはさらにこうあった。「汚染物質は低い風により運ばれ、地形の影響を受けた。風や雪の影響を受けた山の東側斜面に蓄積し、谷間に水が淀み、ホットスポットが表れた」。南北に伸びる阿武隈の分水嶺が“壁”になって、主に東側の山の斜面が放射能にまみれた。

 山岳連盟の場合は、阿武隈の山々、広くは福島県の山々の登山ははたして可能か、が測定の目的だ。原発事故からほぼ1年が過ぎた時点では「避難区域外の山であれば、被曝量が問題になることは少ない」という評価だった。それから3年がすぎた。問題になる度合いはさらに下がったというべきだろう。
 
 鎌倉岳は小学校の遠足で初めて登った。頂上から双葉の海が見えた。大滝根山へは、中年になって何年か続けて登った。阿武隈の山の子として育った以上は、阿武隈の山の「今」と向き合い、考え続けないと申し訳が立たない――3・11後はそんな思いが残響している。

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