街のギャラリーから展覧会の案内はがきが来る。オープニングパーティーが開かれる場合もある。平のギャラリー界隈で土曜日(1月24日)夜、阿部幸洋絵画展のオープニングパーティーが開かれた=写真。
阿部さんは毎年、スペインから里帰りをして、ふるさとのいわき、その他で個展を開く。オープニングパーティーは画家本人、そして仲間と旧交を温める場でもある。
いつもの顔ぶれがそろったなかに1人、80歳は超えたと思われるおばあさんがいた。品のいい顔をしている。紫色の毛糸の帽子をかぶり、ラクダ色のコートに同系色の厚手のマフラーをし、手袋をして傘を持っている。
阿部作品の新しいコレクターだろうと思ったが、ぽつんと1人、隅のいすに座っているのが不思議だった。だれかが声をかけるわけでも、だれかに話しかけるわけでもない。祝辞と乾杯の発声が終わって参加者がテーブルの上の料理に群がると、おばあさんも加わった。
そのうち、おばあさんの姿が消えた。おばあさんを知る知人が遅れてやって来た。顔を合わせたあとにいなくなった、と知人がいう。料理の出るイベントに現れては“持論”を語り、料理を食べて帰るのだそうだ。知人の地元では知られた存在らしい。
いつ、どこで、どんなイベントがあるか、常にチェックしていないと料理にはありつけない。なんという情熱だろう。
昔、「葬式ばあさん」というのがいたそうだ。弔問客になりすましてお斎(とき)の料理を食べに来る。貧しい時代だったから、見て見ぬふりをして追いたてるようなことはしなかった。
現代の「パーティーばあさん」は貧しいのか、寂しいのか。会費制のオープニングパーティーではないから、基本的には「だれでもウエルカム」。そこをついてきた。人間っておもしろい。
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