読みたい本を、いわき総合図書館(正確には「いわき市立図書館」)のホームページで探したら、四倉図書館にあった。総合図書館のあるいわき駅前と四倉図書館のある四倉のまちの中間あたりに住んでいる。なにも総合図書館経由で借りる必要はない。直接、借りに行けばよいのだ。
四倉図書館は公民館に併設されている。近くに鉄筋コンクリート造りの中学校や病院がある。海岸に近いので、東日本大震災では一帯が津波に襲われた。海岸堤防のすぐそばでは家が流失し、図書館周辺では浸水被害に遭った。
四倉図書館を利用するのは震災前の2009年6月以来、6年半ぶりだ。「総合」が長い図書整理期間に入ったとき、必要があって周辺の「内郷」や「四倉」に足を運んだ。「読む」よりは「調べる」ためで、純粋に「読む」楽しみのために借りるのは半分くらいか。
確かスリッパを履いて本を探したな、小学校の教室2個分くらいだったな――と記憶を探りながら国道6号を北上した。クリナップ井上記念体育館前で赤信号になった。脇にいわき市の津波標識があった=写真。「津波避難場所/クリナップ体育館駐車場/避難場所の海抜4.0m」と表示されている。ふだんは通過するだけだから、標識は目に入らない。
道路の向かい側にはクリナップの四倉工場がある。そこを過ぎると、右手に遠く海岸の松林が見える。このあたり、海岸線から国道6号まで1.5キロ前後だろうか。防潮林は津波塩害を受けて立ち枯れし、かなり伐採された。「密林」から「疎林」に変わっている。遠目にもはっきりわかる。
借りたい本はすぐ見つかった。近くに併読したい本があったので、それも借りた。情報はいながらにしてネットで――確かに便利だが、現にそこへ出かけて行くことで手に入る情報もある。団塊の世代あたりまでは(その下の世代も、だろうが)、アナログが基本。デジタルとアナログの組み合わせだよと、若い人には言っている。
帰りは国道6号ではなく、黒松の防潮林内を走る海岸道路を利用した。通るたびに(というのは正確ではないが)、風景が変わっている。海岸堤防のかさ上げ工事がかなり進んでいた。仁井田川河口では水門?工事(ではなく、「橋の架け替え工事」という情報をいただいた)が行われている。枯れた黒松が林内至る所に切断して積み上げられていた。防潮林の再生事業はすでに始まっている。海も川も大改造だ。
変わらないのは海岸から西方(いや南も北も含む三方)、平野部の先に広がる阿武隈の山並みだけか。阿武隈は、いわきにとっては外界への回路を閉ざす「障壁」のように感じていたが、このごろは逆にいわきを守る「防壁」のように思えてきた。その両方の役目を果たしてきたのだろう。
四倉図書館を目標に小世界を一周するだけの短いドライブだったが、車窓の風景にいろいろ考えさせられた。
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