野生動物の交通事故死はタヌキが最も多い。全体の40%に及ぶらしい。高槻成紀著『タヌキ学入門』(誠文堂新光社、2016年)=写真=で知った。輪禍に遭うタヌキは高速道路だけで年間1万匹、一般道を含めると11万~34万匹と推定されている。
英語で「ロードキル」(道路での殺し)というそうだ。なぜタヌキの交通事故死が多いのか――を含めて、生態的な基礎知識を知りたくて、いわき総合図書館の新刊書コーナーにあった『タヌキ学入門』を借りて読んだ。
タヌキは環境の変化に応じて食べ物を変える適応力を備えている。そのうえ繁殖力が高い。あれだけロードキルに遭っても、集団の数が今のところ保たれているのは、ひとつにはこの繁殖力の高さだろうという。
にしても、タヌキは車に対して無防備すぎないか。「タヌキは自動車が何であるかをわからないのではないかと思われる。(略)ヘッドライトそのものを何かの生き物と認識するのかもしれない。(略)秋になると子ダヌキの犠牲が増える」
これまで目撃したロードキルは、市街地では犬、猫、ハクビシン。猫が圧倒的に多い。郊外では(夏井川渓谷へ行くまでの間も含めると)、タヌキ、テン、ヤマカガシ、スズメ、コジュケイ、ツバメ、フクロウ、ムクドリ、ノウサギ。
おととい(1月17日)、目の前で猫のロードキルを目撃した。車列の間に歩道から猫がとびこんできたらしい。運転手はブレーキをかけるでもなく、ハンドルを切るでもなく、そのまま通過して行った。あとに猫が横たわり、ひくひくけいれんしたかと思ったら、すぐ静かになった。
通過すれば通過できたが……。後続車両にひかれる。車を止めてハザードランプを点滅し、すぐ後ろの車に手を挙げて合図したあと、猫を歩道に移した。せめて外見がきれいなまま昇天していけよ――。
タヌキは路上をのろのろ歩いて、逃げきれずにはねられる。猫は直前横断をしてひかれる。どちらにしても、ドライバーは直前でしか発見できない。猫の場合は、ドライバーははねたこと自体、気づかないのではないか。
忘れていた。もう3年余り前になる。当時のブログによると、小雨が降って薄暗くなった夕方、小1の男児が道路を渡ろうとして車にはねられた。その直後にたまたま車で現場を通った。縁石のそばの車道に男児が横たわり、かたわらで若い男性がケータイを耳に当ててかがんでいた。男児は事故から約20時間後に亡くなった。
肉親が、友人・知人が、地域の住民が、ある日突然、この世から拉致(らち)されるように逝ってしまう。交通事故で死んではいけない。ましてや安全なはずのスキーバスツアーが突然、暗転する。あれはバス会社によるロードキルではないのか――そんな疑念がぬぐえない。
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