2016年6月21日火曜日

福島県初の「恋人の聖地」

 田村市の「あぶくま洞」が「恋人の聖地」に選ばれた。ラベンダー園を見下ろす敷地内に「誓いの鐘」も設置された――という新聞記事を読んで、少し前に訪ねた栃木県・那須高原の「恋人の聖地」を思いだした。
 那須の山々を北に仰ぐ標高1000メートルちょっとの山腹に展望台が設けられていた。東に那須野と南北に連なる八溝山系が見える。その奥の阿武隈の山々はかすんでいてよく見えなかった。

 一角に「恋人の聖地」のモニュメントと、恋人が2人一緒にふもとの温泉街を見下ろせる横長の「のぞき窓」=写真=がある。ふもとの夜景が、ピエロが踊っているように見えるのだそうだ。ピエロの鼻が赤く光って見えたら必ず2人は結ばれる――とモニュメントにあった。

 ひとり、窓からふもとをのぞいたのは、日が傾くには少し早い午後。ときめく力がなくなっていたのか、街並みからピエロを想像することはできなかった。若いカップルが展望台まで来るのは、しかし、現実にピエロの鼻が赤く光って見えるか見えないかより、そういう「物語」に好奇心が刺激されて、だろう。

 展望台から北東へ進んで三つ目の尾根の山頂にゴヨウツツジ(シロヤシオ)が群生している。山頂の一角、草原と林の境目にも「恋人の聖地サテライト マウントジーンズ那須」があった。ダケカンバとゴヨウツツジが接触しているのを、恋する2人に見立てた。こちらは見た瞬間、乾燥した春先などに強風でこすれて燃えださないか、心配になった。

「恋人の聖地」は、静岡市にあるNPO法人地域活性化支援センターが選定している。よく知られた人たちが理事になっている。少子化対策と地域の活性化への貢献をテーマに、観光地域の広域連携を目指すプロジェクトだそうだ。

 あぶくま洞には一度入ったことがある。山の陰にあるふるさとへ行くのに、ときどき、あぶくま洞の前の道路を利用する。ラベンダー園は敷地内の斜面を利用したものだろうか。前はなかったように思う。
 
 近くには「星の村天文台」がある。というより、あぶくま洞敷地内のてっぺんにあって、歩いて行けるようになっているのだとか。
 
 阿武隈高地のイメージは、私のなかでは星の降る庭。空が澄んでいるので、星が大きくうるんで見える。そもそも星の村天文台は、あぶくま洞と対をなす施設らしい。あぶくま洞で「地底の宇宙」を体感し、星の村天文台で「本物の宇宙」を体験する。昼は神秘の鍾乳石に、夜は満天の星に永遠の愛を誓う――そう考えると、福島県内初の「恋人の聖地」はなんともスケールが大きい。

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