2016年6月30日木曜日

梅ジャム

 震災後、初めて梅ジャムをつくった。今年(2016年)は今までになく実がなった。手でもぎり、棒でたたき落としても残っている。冬の剪定がへたくそで、枝が天へと伸びた。上部の実にまで棒が届かない。それでも、かごに二つ=写真。これをすべて梅ジャムにしたら、冷蔵庫では保管しきれない。知り合いにどんどんあげよう、ともくろんだのはいいが……。
 口にふくめばとろける梅干しより、カリカリの梅漬けが好きだ。それも実の大きい高田梅が。で、梅漬けをつくるために高田梅の苗木2本を手に入れ、夏井川渓谷の隠居の庭に植えた。

 実が収穫できるようになったころ、1本が台風にもまれて倒れ、根っこが少し浮いた。かしいだ幹にコンクリートブロックを当てて支えた。やがて震災と原発事故がおきた。庭が全面除染の対象になり、表土を取り換えるときに、ご丁寧にこの木も除去された。残る1本は、震災後、実の収穫を休んだ。2回ほど剪定しただけにとどめた。それが、今年は鈴なりだ。

 梅漬けを――の夢は、初めて実を収穫したときに消えた。実がそばかすだらけだ。そばかすは一種の傷。そこから硬化したり腐敗したりするので、結局、梅ジャムにするしかない。それさえちゃんとやろうとすると、手間ヒマがかかる。

 食感のいいジャムにするには、裏ごしをする。「教科書」どおりにやろうとして、馬の毛をつかった裏ごし器を探していたら、街の曲物屋さんから「馬の毛はもう料理人も使っていないよ」と笑われた。「教科書」はすでに時代に合わなくなっていた。
 
 震災前の自分のブログを参考にして、①梅を一晩水につける②ザルにあけてへたを取る(数が多いので、楊枝ではなく千枚通しを使ったら、先端部の表面が梅酢で腐食し、黒くなった)③ホーロー鍋で皮にひびが入るまでゆでる④さらに5~10時間水につけて酸味をやわらげ、道具を使って種を取る――。
 
 このあと、やわらかくなった梅の実を木ベラでつぶしながらこしていくのだが、これに時間がとられる。今回も種を取るところまでは、なんとかいった。裏ごしをして中火でことこと、という段階にいく前に時間がなくなった。「あとはやって」。カミサンにバトンをタッチしたが、カミサンもガス台の前に立ち続けるわけにはいかない。結局、小瓶ひとつ分をつくっただけに終わった。
 
 梅ジャムをつくるには、そのための時間が主、ほかの用事は従くらいの余裕がないといけない。いろんな用事の合間に梅ジャムを、なんてことでは、いい味のジャムにはならないのだ。前も反省し、それを忘れていて、収穫はこれまで最高だったのに、つくったジャムの量は最低だった。

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