日曜日には、いつものカメラのほかに、300ミリレンズのカメラを持っていく。それを取りに隠居へ戻ってまた庭に立つと、鳥は消えていた。が、10分もしないうちにまた現れた。いちいち焦点を合わせながら撮った一枚がこれ=写真。あとで拡大したら、ウソの雄だった。シダレザクラの新芽をくわえている。
ウソは、スズメ目アトリ科ウソ属の野鳥。いわきでは冬に飛来する「漂鳥」だ。渓谷に通い続けて二十数年、初めて出合った。
利害関係のないとき、つまり傍観者でしかなかった記者時代、ウソは勿来の関公園、あるいは石森山あたりで桜の新芽をついばむ害鳥、取材対象のひとつにすぎなかった。が、現にわが隠居の庭に現れ、せわしくシダレザクラの新芽をついばむ姿を見ると、心穏やかではいられない。今年(2018年)はシダレザクラのてっぺんだけ花がない、といった状態になってしまうのか。
ただ、雄はうっとりするほど美しい。頭と尾、翼が黒色。背中は灰青色。頬とのどは赤色――と鳥類図鑑にあるが、実際には赤は桃色に近い。写真を拡大したら、腹の方まで赤みがかっていた。ウソはウソでも亜種の「アカウソ」らしい。ほかに、のどから胸や腹まで赤い、やはり亜種の「ベニバラウソ」がある。日本野鳥の会いわき支部の『いわき鳥類目録2015』で知った。
ウソにまつわる行事として「うそ替え神事」がある。ウソが「うそ」に通じることから、災厄・凶事を「うそ」として、「吉」となることを祈るものだそうだ。国会がやっているのは、この逆のパターンか。「真っ赤なうそ」は論外として、「赤いウソ」のふるまいはまあ、眼福にもあずかったから許すか。
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