2018年6月2日土曜日

老いの現場

 車を運転する自分への戒めとして書く――。きのう(6月1日)の夕方、用があって内郷へ出かけた。片側2車線の旧国道6号だから、通行車両はけっこう多い。帰りに歩道寄りの車線を利用して、ヨークベニマル内郷店角の交差点に入った。内側の車線に右折車が止まっていて、対向車線からよく見えなかったのか、軽車両が右折して来て急に目の前に現れた。
 あっ、ぶつかる! そう思ってブレーキを踏みながら左にハンドルを切り、すぐまた歩道のブロックを避けて右にハンドルを切った。それで、やっと止まった。相手も止まった。こちらとの距離は1メートルほどだったか。
 
 時速50キロ。相手が止まっていなかったら、そのまま衝突して宙を飛び、夫婦で病院か天国へ行っていたかもしれない。相手を見たら、私より年上のオジサンだった。助手席でカミサンがドキドキしていた。「ジイサンだよ」。「あなたも」と、とがった声でいわれた。老いの現場の、これはヒヤリ・ハットの一例。
 
 その1時間前、近所の診療所へ薬をもらいに行った。あとでやって来たおばさんたちが待合室で話し始めた。若い人なら<静かに話してくださいよ>というところだが、「終活」にもつながる内容だ。聞くともなく聞いているうちに、老いの現場の切実さを思った。
 
「玄関からあがるとき足をぶつけた。いつまでも痛みがとれないので(かかりつけの)整形外科で先生に言ったらレントゲンを撮ってもらった。足の指にひびが入っていたの」「自転車で買い物に行くのは、(乗るためではなくて)荷物を載せて引くため。荷物を手に持つのはきついから」「私もきつい」

「(奥さんに先立たれながらも、ちゃんとしていた男性の例を持ち出したあと、一般論として、女は)男よりは早く死ねないよね。男は身なりもかまわなくなるから」

もらった薬を待合室の長椅子に置いたオバサンが加わる。「頭のねじが緩くなって(ぺちゃくちゃ)。じゃあね」。そのあと、窓口で「薬は?」。受付の女性が出てきて、長椅子の薬を指さしながら「これですよね」。「そうだった、頭のねじが緩くなってしまって」

 それよりさらに5時間前。朝、留守番をした。生協から食材が届いた。「これは冷凍です」。受け取って冷蔵庫にしまった。あとでカミサンがいう。「冷凍室ではなくて冷蔵室に入っていたよ、解けてはいなかったけど」。なにをしても、どこへ行っても、老いの現場が現れる。

 こんな日には気持ちを静め、落ち着かせるために、なにか好きなことをしたり、思い浮かべたりした方がいい。

 パソコンを開けてヤマボウシの花を見た。平市街からいうと夏井川渓谷の入り口、磐越東線上小川トンネルと磐城高崎踏切近くの谷側にその木が自生している。先の日曜日(5月27日)、満開の花を撮影した=写真。清楚な花の写真を見ながら、エアバッグを体験しないですんだことを神様に感謝した。

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