2019年11月12日火曜日

台風19号㉙「阿久津曲がりねぎ」も

きのう(11月11日)の拙ブログで、平の「三町目ジャンボリー」に出店した冠水被災農家(小川町)についてちょっと触れた。「里芋を売っていた若者に聞くと、ネギはダメだったという。里芋は熱帯雨林、ネギは砂漠がふるさと。ネギは、里芋と違って水には弱い」
きのう、ブログをアップしたあと、NHKのローカルニュースで、郡山市の伝統野菜「阿久津曲がりねぎ」が冠水して大きな被害が出たことを知った=写真上・下(ウエブから)。
ネギは地中の湿度が高いと根腐れを起こす。夏井川渓谷の隠居で栽培している昔野菜(伝統野菜)の「三春ネギ」は、今年(2019年)、梅雨の曇雨天がたたって根腐れを起こし、あらかたとろけた。冬に食べるどころではない。残った数本は種採り用に残しておくしかない。種は種で冷蔵庫に保管していたものが湿って異臭を放つようになり、10月10日までにまいてはみたものの、とうとう発芽しなかった。

三春ネギと阿久津曲がりねぎは親戚、ないし同一種と私は考えている。三春ネギの本場の田村地方では、夏に斜めに植えなおす「やとい」という作業をする。それで曲がりネギができる。阿久津でも同じ作業をする。秋に種をまくのも同じ。それ以上に、郡山市に編入・合併するまで、阿久津は田村郡の一部だった。阿武隈川の右岸に位置し、三春町とは地続きだ。現地を“取材”して近縁性を確信した。

師走に入ると、自分でつくっている三春ネギとは別に、郡山市に本社のあるいわきのスーパーから阿久津曲がりねぎを買う。三春ネギと同様、甘くて軟らかい。太く長く白いいわきのネギは、見た目はきれいだが、硬い。三春ネギを食べて育った私は、硬いネギには食指が動かない。それで、三春ネギを栽培するようになり、阿久津曲がりねぎを買って食べるようになった。

そういえば、夏井川渓谷が紅葉時期を迎えると、小野町のNさんが自然薯の臨時直売所を開く。以前は曲がりネギも売っていた。ある年、こんなやりとりをした。「この曲がりネギは『三春ネギ』?」「そうです、小野町でつくってますけどね」「『阿久津曲がりネギ』と『三春ネギ』は同じだと思うんだけど」「そうです、阿久津からネギ苗を買って来るんですよ」

農作業の中核だった父上が入院し、亡くなってからは生産規模を縮小したのかどうか。去年、渓谷の臨時直売所には、とうとう曲がりネギは並ばなかった。例年だと、10月下旬には単管パイプで直売所の柱を組み立てる。今年はまだその気配すらない。

自前の三春ネギもダメ、阿久津曲がりねぎもダメ、とくれば、流通には乗らないものの、道の駅などの直売所には並ぶ、軟らかく甘いネギを探すしかない。雪が降らないうちは小野町まで遠征できるが、厳寒期にはちょっと……。しかし、春になったら田村地方からネギ苗を調達する――それだけは決めている。

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