2020年7月31日金曜日

カツオの摺り流し

調理師免許を持つ若い仲間がいる。定例飲み会の場所を、街からわが家の向かい、ゲストハウス(故義伯父の家)に切り替えた。台所の調理台が男性向きの高さだったのが気に入って、2回目は「魚料理をやる」という。飲み物は各自が持ち寄った。しゃべっているそばから次々に魚料理が出来上がり、食卓が華やかに彩られた。

 カツオとスズキを1匹まるごと持参した(代金は7人の会費でまかなった)。「刺し身」と、バーナーで皮をあぶった「火山(ひやま)」のほかに、スズキの「洗い」、カツオの「摺(す)り流し」が出た。カツオの刺し身一本やりの人間としては、火山も、洗いも、摺り流しも、“宅飲み”では初めてだ。味は文句なし、だった。 

「器もごちそうのうち」という。スズキの火山を盛った皿=写真上1=は、川内村の故志賀敏広氏がつくった。いわきでの展示会だったか、川内の工房だったかでカミサンが購入した。真ん中が青みを帯びた清流を思わせる磁器が、今が旬のスズキを引き立てる。夫婦2人だけでは使うチャンスがない。「使い初め」でもあった。「器も喜んでいる」といわれてみれば、確かにそうだ。

蛸唐草(たこからくさ)風の模様がサッと描かれた韓国製の大きな煮物鉢には、前もって作ってきた豚の角煮。これも器とマッチして豪快な感じがよく出ていた。やや濃い味も酒に合った。

最後に出てきたのがお椀(わん)に入ったカツオの摺り流し。マグロでいえば、骨のすきまに残った赤身(中落ち)をこそげ取って「ネギトロ」にするのと似ているか。調理に立ち会ったカミサンの話だと、ネギトロと違うのは、片栗粉をまぶして加熱したこと。そのあと、摺り鉢でよく摺り、みそ仕立てにして、小口切りの細い葉ネギを散らした。これがまた舌を喜ばせた。

刺し身も摺り流しも余った。刺し身は調理した本人が持ち帰り、摺り流しはそのまま冷蔵庫で保管した。

 後日、晩酌にあわせて冷たい摺り流し=写真上2=をすすった。ぜんぜん生臭くない。長梅雨で寒いくらいなのに、“冷製スープ”としても繊細な味わいだった。粗汁も好きだが、摺り流しは熱くてよし、冷たくてよしと、万能なところが素晴らしい。カミサンは残りを冷凍したようだ。梅雨が明けたら、今度はジェル状のものを食べてみるか。


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