2021年1月16日土曜日

白菜漬けで失敗

        
 カミサンが小さいころ、父方の祖母からよくいわれたそうだ。「三度炊く飯(めし)さえ硬し軟らかし」。ちゃんと五・七・五を踏まえている。昔、家によっては朝・昼・晩と3回、ご飯を炊いた。ルーティンワークであっても、そのつど出来は異なる。時には失敗もする、心してかかれ――という戒めなのだろう。

毎朝、「目玉焼きご飯」が出る。ご飯の上に載っている1個の目玉焼きも、日によって黄身が硬かったり、軟らかかったりする。私は生に近い黄身が好みなので、卵焼き(白身)と卵かけ(黄身)が楽しめるくらいの焼き加減がちょうどいい。しかし、これもまた「硬し軟らかし」だ。それと同じことを白菜漬け=写真=でやってしまった。塩がなじまなかったのだ。

 1月3日の日曜日、学校の後輩の家へ年始に行った。わが家から車で15分ほどの田園地帯で、母屋をはさんで前と後ろに畑がある。畑は短冊状だ。南北に長い。

前の畑はニュータウンに住む知り合いなどに開放している。地主である後輩は、畑にあるものは自由に取っていい、といわれているそうだ。帰りに白菜2玉をもらった。

 ルーティンに従って八つ割りにし、半日干して甕(かめ)に漬けた。前は白菜の重さを量り、それに合わせて食塩の量も決めていたが、今は直接、葉の間に塩を振る。塩梅(あんばい)を体が覚えたので、計量の必要がなくなった。

風味用のユズの皮をみじんにし、昆布と激辛トウガラシを刻んでおけば、漬け込み作業は小一時間で終わる。

6キロと2.5キロの漬物石を載せたら、一晩で水が上がった。すぐ大きい漬物石を外し、小さい重しだけにした。あとは時間の経過とともに塩がなじんでくるのを待てばいい、はずだったのだが……。

 大きい漬物石を急いで外したのにはワケがある。正月2日にカミサンの実家で昼飯をごちそうになった。白菜が生に近いくらいにパリパリしているのに、うまく漬かっている。重い漬物石を長くのせておくと、しんなりしすぎて筋っぽくなる。今度は張りのある白菜漬けをつくりたい――。で、水が上がり始めると同時に漬物石を軽くした。この点だけが、この重しと時間の加減だけが今までと違っていた。

野菜に塩を振ると塩分が細胞内に入り込み、代わりに水分がしみ出て軟らかくなる。水分は浸透圧の作用によって塩分の薄い方から濃い方へと移動する。漬物石は、その移動を物理的に早めてくれる――。今回、特に塩を多く振ったわけはない。計量していたころに比べれば、少なめだ。とすれば、やはり漬物石の圧が弱かったのか。

1週間後の日曜日(1月10日)、また後輩の家を訪ねた。おみやげに白菜漬けを持って行った。この時点ではまだ塩のなじみ具合を確かめていなかった。

そんな失敗を知らずに、また白菜2玉をもらった。連休明けには南岸低気圧の影響で太平洋側のいわきも雪になった。天気が回復してから八つ割りにして白菜を干し、一晩おいたきのう(1月15日)朝、ルーティン通り甕に漬け込んだ。今度こそ「いい塩梅」に仕上げて、後輩に進呈しないと気持ちがおさまらない。

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