日曜日(1月3日)の宵――。手元でスマホがささやき出したと思ったら、ほどなく固定電話が鳴り出した。スマホは私、固定電話にはカミサンが出た。年賀の電話だった。3メートルほど離れたところで、それぞれが受話器を耳に当ててしゃべっている。家の中ながら駅前にいるような、おかしな光景ではあった。
スマホは市内から、固定電話はイタリアに住むカミサンの高校時代の同級生からだった。新型コロナウイルス問題が世界を駆け巡った去年(2020年)3月下旬にも、イタリアから電話がかかってきた。
そのころもイタリアは深刻な状況だった。新聞報道では、去年の3月27日時点で死者が約8200人、それから2日ほどしかたたないのに1万人を超えた。そのさなかの電話だった。
「カミサンの同級生がミラノの東、『ロミオとジュリエット』で知られるベローナに住んでいる。向こうの日中の時間に合わせて電話をかけているのだが、まだつながらない」。3月25日のブログに書いたら、彼女がそれを読んでカミサンに連絡してきた。まずは無事だったことにホッとする。
ネットで情報を集めた。以下は拙ブログによる、当時のイタリアの様子。原則外出禁止で、薬局と食料品店以外の店は閉鎖、宅配はOK、外出許可書には「感染していない」という申告項目が追加された。
同級生はイタリア人のご主人とベローナの山の上の村に住んでいる。人口は約2500人。スーパーはない。代わりに移動販売が来る。
同級生が伝えるその村の当時の様子――。予約すると品物を届けてくれる。食料品の買い物だけは許されている。小麦粉30キロを買いだめして、自分でパンをつくっている。散歩に出ればパトカーに止められ、外出許可書の提示を求められる。牧師も医師も亡くなっている。「新型コロナウイルスを甘く見てはいけない」。イタリアからの警告が胸に刺さった。
それから9カ月――。イタリアでは(独・仏・英もだが)ロックダウン(都市封鎖)が行われている=写真(1月7日付朝日新聞)。ごみを出すにも、買い物へ行くにも「○時から○時まで」と書いた許可書が要る。許可書を持っていないと罰金が科される。死者はこの9カ月の間に、1万人から7万人に膨らんだという。
そのあと、最近、私がブログで取り上げた、北イタリアの山岳地帯を舞台にした小説の話になった。パオロ・コニェッティ/関口英子訳『帰れない山』(新潮社、2018年)で、街(ミラノ)の少年ピエトロと山の少年ブルーノが大人になって山で再会し、友情を深める物語だ。2人は山奥に家を建てる。ブルーノが雪に埋まったその家で、突然の体調不良に見舞われて凍死したところで物語は終わる。
舞台になったのはアルプス山脈第二の高峰、モンテ・ローザ(標高4634メートル)。本の表紙絵にそっくりの風景写真がネットにあった。コルティーナ・ダンペッツォ。南アルプスの中心的なまちだという。
ご主人が『帰れない山』を読んだ。もちろん原作を。山にも行ったことがある。「悲しい終わり方だね」と言っていたそうだ。
コロナの話に戻る。イタリアから電話があったあとの去年4月中旬、スペインに住むいわき出身の画家に国際電話をした。やはり、電話の向こうで「日本は甘いよ」と言っていた。
去年(2020年)4月以来の緊急事態宣言が、きのう(1月7日)出された。対象地域は1都3県、期間はきょう8日から2月7日までの1カ月だという。福島県は1都3県との往来自粛を県民に要請するそうだ。私らは年金生活の巣ごもりが基本だから、まず遠出することはない。夜8時以降の不要不急の外出もしない。これまで通り、マスク・手洗い・3密回避を続けながら静かに暮らす。
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