カツオの刺し身は、若いときにはにんにくおろし醤油で食べた。今はにんにくおろしにわさびを混ぜる。わさびの代わりに、しょうがとにんにくのおろしで食べる、という人もいる。
先日、フェイスブックに知人がたまねぎおろしでカツ刺しを食べた話を載せていた。たまねぎおろしもありか――。
7月に入るとほどなく、カミサンの知人から自家栽培をしている夏野菜のお福分けが相次いだ。インゲン、ピーマンなどのほかに玉ネギもそろったので、カミサンがてんぷらにした。
てんぷらには大根おろしが付き物――。ところが、あいにくそれがない。「おろしはないけど」というので、「玉ネギをおろしたら?」。料理に詳しい知人のSNSで仕入れたばかりの情報を伝えると、「それもいいか」という。
おろしに使った玉ネギは淡路島産とかで、また別の人からのお福分けだった。見た目は、少し黄ばんだ大根おろし、というところだろうか=写真。
おろしそのものを口に含むと、甘い。同時に、生の玉ネギの辛みも口中に広がる。大根おろしとはやはり違う。が、味に深みと奥行きが出たような感じがする。
麵つゆにとけ、てんぷらそのものの味にまぎれて、生のタマネギの辛さは薄れたが、消えたわけではない。
ネギの仲間、例えば春にノビルを味噌で生食したときの、のどの奥に残る刺激感、それと似たようなものがしばらく残った。
いつかは知人のように、たまねぎおろしでカツ刺しを試してみようと思う。最初はたまねぎおろしだけ、次はにんにくおろしも混ぜて。
それだけではない。今まで大根おろしで食べてきたキノコのあれこれ、例えば除染した隠居の庭に出る春のアミガサタケや秋のアカモミタケなどもたまねぎおろしとの相性を確かめたい。
食べ物、というより食べ方、料理は常に創造力が発揮される分野でもある。ドレッシングがそうであるように、おろしの世界も、私たち素人が参加できる、可能性に満ちた分野にはちがいない。
少しだけ、消費者ではなく生産者の方へ、あるいはその中間に立つ調理人の方へ踏み出して食べ方を考える。
『第三の波』を書いた未来学者アルビン・トフラーのいう「生産消費者(プロシューマ―)」と、これは響き合うかもしれない。
週末に土いじりを始めてから、自分を「生産消費者」と位置づけるようになった。「生産もする消費者」である。それを意識することで、プロの生産者、あるいは料理人の思いにも、純粋な消費者の思いにも共感できる回路ができたように思う。とにかく試してみる、それに尽きる。
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