2023年7月26日水曜日

バトンタッチ

                      
 いわき地域学會の代表幹事に就いたのは、平成22(2010)年2月だった。翌年3月、東日本大震災と原発事故が起きる。直前に地域学會の定時総会が開かれた。

鹿児島県霧島市にある新燃岳(標高1421メートル)の噴火が収まらなかった。東麓には宮崎県高原町(たかはるちょう)がある。

総会後の懇親会で義援金を募り、後日、同町が開設した義援金受付口座に郵便局から振り込んだ。

それからほどなく、東北の太平洋側が大震災に見舞われる。沿岸域は大津波に飲まれ、福島県浜通りでは相双地区を中心に原発避難を余儀なくされた。

地域学會の活動も秋まで休止した。活動再開後は、「地域を総合的に研究する」目的に、新たに「地域復興に協力する」が加わった。

その延長で、『高久・豊間地区総合調査報告書』(2013年3月)や『熊川稚児鹿(しし)舞が歩んだ道――福島県双葉郡大熊町』(2015年3月)が刊行された。

『高久・豊間――』は最初、高久地区だけだった調査範囲を豊間地区まで拡大、新たに「東日本大津波が新舞子浜海浜植物に与えた影響」「東日本大震災津波被害報告」「私記録(日記)『私の東日本大震災と避難所生活』「いわき市平・豊間の獅子舞」の、震災関係論考4本を加えた。

『熊川稚児鹿舞――』は、夏井芳徳副代表幹事(当時)が原発事故で全町避難を余儀なくされた大熊町の伝統芸能に焦点を当て、その歴史や保存会の組織・活動などを調査し、併せて原発事故に伴う休止・復活までの足跡を追った。どちらもサントリー文化財団の助成を受けた。

大災害はその後も続く。「令和元年東日本台風」がいわき市を襲う。さらにその翌年からは新型コロナウイルス感染症が流行し、日本でも3年にわたって「パンデミックの嵐」に巻き込まれた。

地域学會の活動の柱は年10回開催する市民講座だが、会場の公共施設が閉鎖・再開を繰り返すのに連動して、これも延期・中止を繰り返した。

それでも、ようやく「ウィズコロナ」の見通しがたつようになった。今年(2023年)は4年ぶりで対面の総会を開き、役員改選で代表幹事のバトンを夏井副代表幹事に渡すことができた。

私が代表幹事を引き受けたときには61歳だった。それが今は74歳だ。41歳から54歳、あるいは51歳から64歳と違って、心身の衰えは否めない。

事務局はこれまで通り拙宅に置く。会への書類などはその都度、新代表幹事に連絡する。ということで、先日、新代表幹事の市民講座が開かれ、新年度の第一歩を踏み出した=写真。

「相談役」になったとはいえ、今まで通り事務局の補助として動くことには変わりがない。これも仲間の「生涯研究」に触れていたい、という思いがあるからだ。

1 件のコメント:

クエルボの人 さんのコメント...

代表幹事お疲れ様でした。

四年ほど前、前職場に奥様とお越しになったとき、私の名札を見て声をかけてくださったのを思い出します。そのまた数年前に「いわき学検定」を受検し、申込先が確かタカじい様のご住所でした。二次試験で惨敗だったにも関わらず覚えていらしたのかと、驚き嬉しかったです。

夏井さんとは、前々職場で館長になられて「館長講座」が催されたときに、一度お話を聞いてみたいと思い受講したのが最初のご縁です。
その後、前職場に就職して二年目のときに偶然夏井さんも入社されました。
夏井さんは、いわきの歴史に関して(特に民俗学分野)とても博識で、お話も面白く、父と同い年ということもありとても親近感があります。
現在は、休みが合えば、夏井さんのお話を聞きに行っています。

いわき地域学會の市民講座にはまだ参加できていないので、機会があれば行きたいです。