2023年7月29日土曜日

やっぱり目には緑

                     
   眼鏡はだいぶ前から遠近両用だ。本を読むときには眼鏡をはずす――というのは、60代前半までの話で、今は眼鏡なしでは新聞も読めない。

 起きて寝るまで、日中はたいていノートパソコンを開いてなにかやっている。調べものと原稿入力。この二つだけで毎日、何時間にも及ぶ。これに読書が加わる。

 その間ずっと眼鏡をかけている。ときどき目の疲れを自覚する。そんなときには眼鏡をはずして、気分転換を兼ねて庭に出る。

 すると、不思議なことに目の緊張がほぐれる、庭木の緑を眺めるだけで目の疲れが癒される、そんな思いがわいてくる。

 この緑の効用は、日曜日、夏井川渓谷の隠居へ行くと、よりはっきりする。畑で土いじりをする。眼鏡はかけない。体が疲れると対岸の森=写真=に目をやる。

 「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」(山口素堂)という江戸時代の俳句がある。この句が示す初夏のころから、緑の森はいくら眺めても飽きない。そして、疲れない。

疲れないどころか、目の疲労がとれていくような感覚になる。夏は、やっぱり目には緑、これを実感する。

 その理由は――。ネットで答えを探ると、すぐウェザーニュースの解説が現れた。それを引用する。

 光の性質の一つに波長がある。人間の可視光線は380~780ナノメートル(色でいうと、紫・青~赤・オレンジ)の範囲の波長で、緑色はその真ん中あたりになる。

波長の長さが中間にあることが、緑色が目にいいとされる理由の一つだとか。波長の長いものや短いものより、目に負担をかけずに知覚できるのだそうだ。

目の仕組みも、もちろん関係する。人間は物を見るとき、「水晶体」(カメラでいえばレンズ)の厚みを変えることでピントを調節する。そのとき使われるのが「毛様体筋」という筋肉だ。

たとえば、近くの物を見るときには毛様体筋を収縮させて水晶体を厚くし、遠くの物を見るときには毛様体筋を緩めて水晶体本来の厚さに戻す。

スマホやパソコンを見続けたあと、外に出て庭木を見ると目が楽になったように感じるのは、この毛様体筋が緩むからだった。毎日、夏井川の堤防を散歩していたころ、こんなことをブログに書いた。

――パソコンの画面、つまり短い距離を見続けていると、目がぼやっとする。画面を見ているときには目をむいている、まばたきも少ない。これでは目が疲労を超えて過労になる。だから、翌日もぼやっとしているのだろう。

それで分かったことがある。散歩は、最初はメタボ対策だったが、眼球の疲れをほぐすためでもあるらしい。散歩を終えると、少しは頭がすっきりする。遠くを見ること、見る距離をさまざまに変えることが大事なのだ――。

 どうやら緑を眺めるのは、目の疲れを取ろうとする人間の本能なのかもしれない。そう、日曜日に渓谷の隠居へ出かけ、緑の世界に身を置くのも、半分は目を休めるためなのだ、きっと。

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