2023年11月6日月曜日

「さびない鍬でありたい」

                      
 カミサンの茶飲み友達が、「読んだから」と置いていった本がある。石井哲代・中国新聞社『102歳、一人暮らし――哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』(文藝春秋社、2023年)。

移動図書館から借りた和田秀樹『ボケずに大往生』(リベラル社、2023年)を、たまたま読み終えたばかりだった。両方=写真=を照らし合わせると、共通するものがある。

『ボケずに大往生』は、高齢者専門の精神科医である著者が、認知症の進行を遅らせるための具体策をつづっている。

『102歳、一人暮らし』は、中国新聞社の女性記者2人が100歳を過ぎても元気に一人暮らしを続ける元教師、哲代おばあちゃんを取材し、新聞に連載したのが本になった。哲代おばあちゃんの生活哲学と暮らしが具体的に記されている。

まずは、おばあちゃんの本から――。インタビューで記者が引き出した最初の言葉。「若い頃からずっと『さびない鍬でありたい』と思ってきたの。何かしてないと人間もさびるでしょ。体も頭も気持ちも、使い続けているとさびないの。鍬は私の一生の宝物でございます」

哲代おばあちゃんは30年以上、毎晩、日記を付けている。「悩み事は日記にちょびっと書きます。そしたら心がすーっとする。自分で納得するんですね」。というわけで、日記形式でおばあちゃんの日々の暮らしが紹介される。

入院生活を経験したあと、「これまで何の変哲もない毎日を送ってきましたが、それがどれだけ難しくて尊いことか、入院してあらためて思いましたよ」。

2人の姪の言葉。「伯母の家にはいつも近所の人や教え子たちが集まっています。人が気安く出入りできる家っていいですよね」「哲代伯母はとにかく聞き上手。いくつになっても好奇心が旺盛で、あれこれ聞きまくる」

「さびない鍬」であるために、おばあちゃんは朝から畑仕事をし、人に会えば会話を楽しみ、何にでも興味を持つ。本も新聞も読み、日記も書く。

そして、『ボケずに大往生』から――。認知症になりにくいとされている人は日常的にどんな行動をとっているのか。

人の話を素直に聞く。人から勧められたら素直にやってみる。新しいことにチャレンジする。好奇心が強い。

認知症の進行を遅らせるには、何よりも人との交流が欠かせない。人に会って話をする。人とのコミュニケーションが認知症予防に最も効果的だという。

おばあちゃんの言葉に戻る。「老いるとできないことは増えるし、心がふさぐ日もあります。でもね、嘆いてもしょうがない。私は自分を励ます名人になって、心をご機嫌にしておくんです」

和田本は「ピンピンコロリ」ではなく、「ニコニコソロリ」を勧める。要はニコニコ笑顔でソロリと静かに向こうへ行く、これこそが望ましい人生の閉じ方だという。

ニコニコの部分は哲代おばあちゃんの「今」そのものではないかと、2冊の本を行ったり来たりして思う。

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