2024年6月10日月曜日

上桶売のこと

        
 今から3年前の令和3(2021)年6月中旬。日曜日に夏井川渓谷の隠居を通り越して、川前町上桶売にある「いわきの里鬼ヶ城」を訪ねた。

 平地の夏井川流域ではすっかりカッコウの鳴き声を聞かなくなった。野鳥に詳しい若いカメラマンに聞いたら、鬼ヶ城で鳴き声を確認したという。それで久しぶりに出かけたのだった。

 そのときのブログがある。平のわが家から渓谷の隠居までは車で30分。隠居からいわきの里鬼ケ城へもざっと30分だ。まずはその時間距離について書いている。

――車で30分圏内であれば、あれこれ考える前に着く。距離も時間も苦にならない。が、1時間となれば出かけるのに覚悟がいる。行くとしてもせいぜい半年、あるいは1年にいっぺんくらいだろうか。

実際には、鬼ケ城を訪ねたのは6年ぶり、その前も5年くらいの間隔が開いていた。1年どころか5年サイクルだ。

いわきの里鬼ケ城は鬼ケ城山(887メートル)の中腹にある。広大な敷地内にキャンプ場、コテージ、レストハウス、グラウンド、山里生活体験館などが配置されている。なにより高原の澄んだ空気がおいしい。

9時前、鬼ケ城に着いた。前日、郡山市からやって来て泊まったという若い家族連れがキャンプ場にいた。さっそくカッコウの鳴き声の有無を尋ねる。「聞きました、夜明けに」

そうだった、忘れていた。高原では夜明け前1時間、鳥たちが大コーラスを繰り広げるのだった――。

最近、パソコンに取り込んだ撮影データを整理(消去)していたら、このときの写真が出てきた。

鬼ヶ城の施設内に植わってあるシラカバやカシワ、池の小動物のほかに、同じ上桶売の「雨降松(あめふりまつ)」を前景にした集落の撮影データもあった=写真。

先日、NHKの「東北ココから」で、「限界集落住んでみた 福島いわき上桶売集落」編が放送された。そのロケ地でもある。

このブログの写真でいうと、手前の木の奥に見える道路を右に進めばいわきの里鬼ヶ城、逆に左へ向かえばほどなくNHKのディレクター氏が1カ月滞在した集落になる。

テレビの映像にディレクター氏の文章を重ねると、彼が住み込んだのは寺の敷地内にある地元の集会所で、住民が電子レンジや冷蔵庫、ホットカーペットなどを持ってきてくれたそうだ。

山間部の4月といえばまだ寒い。しかし、初日から大歓迎の生活が始まった。5月には田植えを控えている。その準備のなかで種まきを経験する。

そうした春から初夏にかけての山里の暮らしを、いわきの平地に住む私らも、実はよくわかっていない。

という意味では、いわき市民自体がはるか山間部の暮らしを知るいい機会になった。

にしても、と思う。市から指定管理者となっていわきの里鬼ヶ城を運営している会社は令和7年3月末をもって解散する。

市はその後の施設の利活用を民間業者と話し合っていくという。「遠い」をいかに「近い」にできるか、だろう。

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