2025年3月19日水曜日

まずはカブから

                     
 冬は白菜を漬ける。その間は糠床を休ませる。一昨年までは糠床の表面に食塩のふとんをかけて眠らせ、台所の隅に寄せて置いた。

 食塩のふとんで空気を遮断し、カビの発生を抑えて糠床を冬眠させる。これを2年前にやめ、目覚めた状態のままにしている。

何も漬けない。朝起きると、いつものように糠床をかき回す。そうしないと、すぐ表面にカビが生える。

おもしろいことに、糠床に手を入れたときの冷たさで、冬の寒さが実感できる。

真冬はさすがに糠床も冷え切っていた。含まれている水分で凍るようなことはなかったが、手を入れた瞬間に引っ込めたくなる朝がたびたびあった。

その感触が少しやわらいできたのは、3月も10日過ぎごろだろうか。12、13日と、なにか冷たさが違っていた。「冬の冷たさ」から「春の冷たさ」へ――。文字にすると、そんな感じだろうか。

4回目の白菜漬けが間もなく切れる。時期的にはもう1回白菜を漬けるのだが、糠床はすでに春の準備ができている。

となれば、今が切り替えるタイミングだ。白菜漬けの甕(かめ)の方にも、そうすべき事情があった。

1月より2月、2月より3月と、甕の水の表面にできる産膜酵母が増えてきた。毒ではないが、塩分濃度が低かったり、気温が高めに推移したりすると発生しやすいという。

甕から白菜を取り出すたびに、いったん水で産膜酵母を洗い流してから食べるようにした。今季の白菜漬けはこの4回目で終わり――。

では、糠床には何を漬けるか。すぐ思い浮かぶのはキュウリだが、次の瞬間には「いやいや、カブを」となる。

これも毎年書いていることだ。キュウリの前にカブを漬けるのは、いわきの歴史や民俗、生業などに詳しかった故佐藤孝徳さんの言葉が頭にあるからだ。

「キュウリは、八坂神社の祭りが終わるまで食べない」。つまり、7月。露地栽培では確かに、そのころからキュウリが実って食べられるようになる。

しかし、ハウス栽培が主流で、1年中キュウリが出回っている今は、冬でもキュウリが食べられる。

糠漬けを再開するときには一種の戒めとして、孝徳さんの言葉を思い出し、店頭に並んだカブを、まずは漬ける。

金曜日(3月14日)に夫婦で街へ行ったついでにスーパーで野菜を買った。そのとき、カブが目に入ったので、ためらうことなく3株をかごに入れ、帰宅するとすぐ下準備をした=写真。

糠床の乳酸菌は夏場より少ないし、塩分も足りないかもしれない。ふだんは半日だがその倍、24時間を漬けてから1個だけ試しに取り出した。カブの内側にはまだ塩分が浸透していないところがあった。味も薄い。

残りは36時間と48時間、それぞれ時間差をつけて糠床から取り出した。丸2日漬けたのが糠漬けらしい味になっていた。

うま味・風味はこれからだ、唐辛子や山椒の若芽、昆布などを加えて調整していく。それもまた糠漬けの楽しみ、といえばいえる。

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