起きるとすぐ石油ストーブに火を点け、茶の間のカーテンを開けて、ガラス戸越しに空を見上げる。冬場の朝の習慣だ。
3月9日の日曜日は曇りだった。向かいの家の屋根がうっすら白くなっていた。真夜中に湿った雪が降って、すぐやんだらしい。
庭の車の屋根も白い。が、庭そのものに雪はなかった。家の前の道路も黒くぬれているだけだった。
庭のジンチョウゲは? 赤いつぼみがはじけて白い花びらを数輪つけている。雪はかぶっていない。
その根元で咲き出した黄色いスイセン=写真=も、ぬれてはいるがふだんと変わりはない。
私は、春から秋には、朝、庭に出て歯を磨く。寒気がしみる冬はそれができない。代わりに、ガラス戸越しに庭を眺める。
春、庭に出て歯を磨くのは、地面のあちこちから芽を出すヤブガラシを摘むためだ。
このつる性植物は手ごわい。地下茎で増える。芽を摘んだだけでは終わらない。地下茎そのものを除去しないとすぐまた芽を出す。
前にスコップとフォークで一部、地下茎を掘り取ったことがある。新芽が5~10センチ間隔で出ていた。
そのつど芽むしりをしても、取り残しがある。夏、生け垣に絡まったヤブガラシが花を咲かせていると、「ああ、手抜きをしてしまった」と後悔する。
今は3月の中旬。一陽来復の冬至から2カ月半がたった。朝6時前には窓の外が明るくなっている。
玄関口から新聞を取り込むとすぐ引っ込み、食事を終えてから、ときどきガラス戸越しに庭の芽生えをチェックする。ヤブガラシのことはまだ考えなくていい。
ジンチョウゲが咲き出してからは、日を追って地面の緑が増えてきた。白っぽい花弁のスイセンは、ジンチョウゲよりも、そして黄色いスイセンよりも早く咲き出した。
街からの帰り、夏井川の堤防を利用する。土手にスイセンが群生し、白っぽい花を咲かせている。それとほぼ同時だった。
黄色いスイセンは花茎が短い。カミサンがどこからか手に入れて植えたら、数が増した。
最初はつぼみにも気づかなかったが、咲き出すと次々に黄色い花弁が目に付くようになった。
朝は2、3輪だった花が、午後には5輪になり、ほかの花茎も黄色い花弁を開きつつある――。そんなことが茶の間からわかる。春ならではの息吹だ。
遠くの山を見れば、先日ほどではないが、ほんのり雪化粧をしていた。山間地では道路まで白いかもしれない。
この日は夏井川渓谷の隠居へ行くのをやめた。家で骨休みをと思ったら、カミサンのアッシー君をおおせつかった。平地を動き回るだけだったので、運転に不安はなかった。
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