2025年3月25日火曜日

メヒカリ市

                 
   日曜日の晩はいつもの魚屋へマイ皿を持って刺し身を買いに行く。このところ、カミサンの希望で盛り合わせが続いている。

今年(2025年)の「初ガツオ」は2月の前半に食べた。それから1カ月余り。マイ皿をカツオで埋めてもいいのだが、今はまだ冬の延長だ。カミサン同様、ほかの魚を楽しみたい思いもある。

3月23日も盛り合わせにした。カツオは半分、それ以外の魚種は店主にまかせる。皿に盛ったあと、いつものように魚種を教えてくれる。「ブリ、タイ、メヒカリです」。「メヒカリ! 刺し身は初めてだよ」

晩酌を再開したので、刺し身と日本酒を交互にやる。まずはメヒカリから。見た目はイワシの刺し身に似る。脂はのっている。味はわりと淡白だ。

魚屋でメヒカリと聞いたとき、実は全く別の「メヒカリ」が思い浮かんだ。たちまち二つのメヒカリが胸中を行き来し、刺し身を口にしたあとは別のメヒカリのことでいっぱいになった。

別のメヒカリとは、メキシコのマチの名前のことである。環境問題をテーマにした本を読んでいて、アメリカのカリフォルニア州と国境をはさんだメキシコ側に「メヒカリ市」があることを知った。それで、ネットで少しメヒカリ市について調べたことがある=写真。

カル・フリン/木高恵子訳『人間がいなくなった後の自然』(草思社、2023年)に、カリフォルニア州のソルトン湖を取り上げた章がある。その中の一節。

「ソルトン湖は、数千年の間にコロラド川から沈泥でふさがり、海へ向かうルートから一時的に分流することで、洪水と蒸発を繰り返してきた。その昔、この湖はメキシコ国境を越える現在のメヒカリ市を含むほど巨大だった」

ネットで知ったことも踏まえていうと、ソルトン湖の標高はマイナス68メートルと海面より低い。

コロラド川が氾濫すると洪水が流入して湖となるが、やがてまた蒸発して砂漠に戻る。つまり、今あるのは巨大な「水たまり」だ。

現在の湖は洪水と人為的なミスが重なって1905年にできた。「砂漠にできた湖」は、一時、観光名所となるものの、次第に塩分が増加し、周囲から汚染物質が流入して「死の湖」と化した。

メヒカリ市はソルトン湖の南方、アメリカとメキシコの国境沿いにある。人口はおよそ100万人。メキシコのバハ・カリフォルニア州の州都だというから驚く。

メヒカリの名前も、メキシコとカリフォルニアの一部を合成したものだそうだ。「メヒ」はメヒコ、「カリ」はカリフォルニアからきている。

メヒカリ市のすぐ北、アメリカ側のカレクシコも、カリフォルニアとメキシコの合成地名だとか。

トランプ氏が再びアメリカの大統領に就いて以来、メキシコやカナダその他の国との貿易問題がよくニュースになる。

メヒカリ市にも日本企業の工場がある。またメヒカリの刺し身を食べたい――などとのんきに考えるだけではすまなくなった。

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