2025年3月26日水曜日

古い絵はがき

                      
 隠居のある夏井川渓谷の小集落で年度末の寄り合いがあった。私も「半住民」なので、毎年参加する。

 地元の情報に触れるいい機会だ。といって、いつも何かを期待しているわけではない。

 今回は、住民の一人が、私に――と古い絵はがき(カラー写真)を持ってきた。片付けものをしていたら出てきたのだという。

 絵はがきは8枚セットで、旧「いわき市小川・川前地区観光協会」が発行した=写真。「福島県立自然公園 夏井川渓谷」というタイトルが付いている。

 小川分は、渓谷を代表する籠場の滝をはじめ、大滝、水力発電所、背戸峨廊(せどがろ)、二ツ箭山の5枚。

 川前分は、鹿ノ又川渓谷、沢尻の大ヒノキ(実はサワラ=国指定天然記念物)、和田山牧場の3枚だ。

 いつ発行されたのか。絵はがきに付されたコメント(字が小さすぎる)を参考に、あれこれ考える。

 まずは交通手段がヒントになる。下車する鉄道の駅のほかに、「バスの便あり」と記されている。その鉄道も、磐越東線の江田駅は「江田信号所」(正確には「江田信号場」)になっている。

マイカーがまだ一般的ではなかったころ、しかも江田信号場が駅に昇格する前の時代に発行された絵はがき、ということになる。

私が渓谷の隠居へ通うようになって、今年(2025年)で30年になる。30年前にはまだ路線バスが隠居の前の県道を行き来していた。

いわき市が合併するのは昭和41(1966)年10月1日、江田信号場が駅に昇格するのは同62(1987)年3月31日だから、絵はがきができたのはざっと40~50年前か。

渓谷に春を告げるアカヤシオは俗名「岩つつじ」のままだ。和名「アカヤシオ」が認知されるのは、高校の先生がいわき民報にエッセーを書いたあとだから、やはり30年以上前になる。

なかに1枚、致命的な誤記があった。誤記というよりは写真の誤用というべきか。アカヤシオが群生する森に水力の「夏井川第二発電所」がある。その発電所の写真が違っていた。

絵はがきを持ってきた住民に言われて一同、間違いに気づいた。同じ渓谷でもおよそ5キロ下流にある「夏井川第一発電所」の写真だった。

レトロモダンな雰囲気は、第一発電所も第二発電所も同じだが、壁面の窓の有無などで違いがわかる。

この建物は昔も今も変わらない。が、滝はどうか。撮影時の水量にもよるのだろうが、岩のかたちが現在とは違って見える。

水は絶えず流動している。それでいつの間にか岩はうがたれ、形を変える? 古い絵はがきから人間の営みの歴史を、自然の時間の変遷を感じるのだった。

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