2018年7月25日水曜日

朝井まかての本

 きっかけは、この酷暑続き。横になって読む本、発見――というところだろうか。
直木賞作家の朝井まかて(1959年~)の本を、カミサンが何冊か移動図書館と総合図書館から借りてきた。なかに『御松茸騒動』(徳間書店、2014年)があった。タイトルに引かれて読んでみた。

尾張藩の若い江戸詰め藩士が国元の「御松茸同心」を命じられる。マツタケの生える御林のことも、村のことも知らない堅物のシティボーイだが、“山流し”(島流し)にめげず頑張って、マツタケがなぜ不作になったのか=盗木防止を理由にした留め山=を知り、“小知恵”をはたらかせて松葉掻きを続け、マツタケ山を再生させる。今風にいえば、主人公が「自然と人間の交通」に気づき、実践する物語だ。

「赤松と松茸の菌は、いわば主君と家臣のようなものでござります」。アカマツの根と、菌根菌としてのマツタケの関係を、上司にわかるように説明する。「共生」と「主従」は違うのではと思いながらも、たとえの面白さにうなった。

山里の食習慣のひとつに「漬松茸(つけまつたけ)」がある。マツタケ産地、たとえば夏井川渓谷の小集落でも、採れたマツタケを味噌に漬ける。それにも言及していた。なかなかの「ネイチャー・ライティング」だ。

 ついでながら、カミサンが借りた“まかて本”はというと――。明治神宮の森づくりを描いた『落陽』(祥伝社、2016年)、江戸の庭師を主人公にした『ちゃんちゃら』(講談社、2010年)、幕末・天狗党の志士に嫁いだ歌人の一生を描いた『恋歌(れんか)』(同、2013年=直木賞受賞)。ほかに、江戸の庶民の暮らしを描いた短編集『福袋』(同、2017年)だ。

『福袋』の装画=写真上1=と扉絵は、イラストレーター白浜美千代さん(1950年~)が描いた。白浜さんのイラストには昔からなじみがある。シャプラニール=市民による海外協力の会の単行本や冊子の装画・挿し絵は、白浜さんの作品であることが多い。
2016年9月1日、「防災の日」に発行されたシャプラの『いわき、1846日――海外協力NGOによる東日本大震災支援活動報告』のイラストも、白浜さんが担当した。なかに、こんなイラストもある=写真上2。『御松茸騒動』の次には『福袋』を読んでみるとしよう。

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