いわき市は3年前の平成27(2015)年、防災マップ改訂版を出した。夏井川渓谷では新たに、人家のある4カ所の沢が「土石流危険渓流」「同危険区域」として書き込まれた。渓谷の隠居が土石流に巻き込まれる可能性があることを初めて知った。
落石は、夏井川渓谷では常態だ。崖に沿う道路にロックシェッドがもうけられ、ワイヤネットが張られているところがある。東日本大震災ではあちこちで落石・土砂崩れが発生した。
そういう渓谷へ週末、20年以上も通い続けているワケは――。行くたびに新しい発見・変化があるからだ、というほかない。
1週間前にはなかった花が咲いている。目が喜ぶ。南から渡ってきた夏鳥のツツドリが鳴いている。耳が喜ぶ。隠居の庭でマメダンゴ(ツチグリ幼菌)が採れる。舌が喜ぶ。私にとっては1週間が比較の尺度だが、渓谷に住む人にとっては毎日が発見の連続だろう。「きょう、アカヤシオ(方言名イワツツジ)が咲いた」「きょう、マツタケが採れた」……。
渓谷のヤマユリは例年よりやや早く開花したようだ。あの5日連続の猛暑が影響したのだろう。
金曜日(7月6日)、隠居へ出かけてキュウリを収穫した。道沿いのヤマユリのつぼみが緑色から白色に変化していた。開花間近のサインだ。それから2日たったきのう午後、渓谷に入ると、崖の途中に白い大輪の花が咲いていた=写真。車が独特の芳香に包まれた。ヤマユリの匂いが降りてくる――目と鼻が喜んだ。
同じ阿武隈高地でも標高の高い田村市では、ヤマユリは「夏休みを告げる花」だ。青空の入道雲と雑木林の道端に咲くヤマユリの花と香りが、梅雨が明けて真夏がきたことを告げる。今年(2018年)はしかし、夏休みの前に散ってしまわないか。西日本の犠牲者に手を合わせつつ、ヤマユリの芳香に染まった黄金の少年時代に思いが還る。
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