ざっと2カ月前、いわきキノコ同好会の会報23号が届いた。座卓のわきに、トーチカのように資料を積み重ねている。カミサンには不評だ。その上に載せておいたら、いつのまにか中段あたりにもぐっていた。あわてて引っぱり出してパラパラやると、会長の冨田武子さんの報文が載っていた。うかつだった。新聞に抜かれた。
トリュフは、日本にはないと思われていた。が、福島県内でも海岸の松林からウスチャセイヨウショウロが、阿武隈の山中からはトリュフの仲間が――と、発見例が相次ぐようになった。山の中のトリュフの場合は、イノシシが掘った穴に残っていた。
今度もイノシシが第一の“発見者”のようだ。新聞記事と会報を併せて読むと、去年(2017年)秋、同好会の女性会員が平の里山で開かれた観察会に、前日、小川町の林道側溝わきで採取したキノコを持参した。そばにイノシシがミミズを探して荒らしたらしい跡があった。そこに転がっていたのだという。
冨田会長はこれをあずかり、『地下生菌 識別図鑑』(誠文堂新光社、2016年)の著者の一人、森林総合研究所の木下晃彦さんに鑑定を依頼した。結果は、2種ある日本固有のトリュフの一つ、ホンセイヨウショウロとわかった。冨田さんらは後日、裏付けのために現地調査をした。すると、前よりは少し小さい個体を発見した。これも木下さんによってホンセイヨウショウロと同定された。
木下さんによると、①ホンセイヨウショウロの特徴は1子嚢(しのう)内で通常2個の球形胞子を持つ点でほかのトリュフと区別される②胞子の色は初め白色で、成熟するにつれて黄色に変化する③ナッツ様の香りがする④これまで宮城・栃木・茨城・大阪など6府県で確認されており、福島県内では初めての記録――だそうだ。
キノコの世界はまだまだ知られていないことが多い。市民が新種・珍種・貴種に出合う確率は花や鳥より大きい。“キノコ目”で山野を巡り続けていれば、だれかがまた別のトリュフを発見する可能性がある。そんな期待が膨らむ超ビッグニュースだった。
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