2018年7月5日木曜日

「カラス学」の教え

 生ごみのカラス対策として“有効”と聞いてからは、わが区内のごみ集積所ではあらかた黄色いごみネットに代わった。しかし、黄色いごみ袋も含めて、それは“誤解”だったようだ。色に関係なくカラスは生ごみの入ったごみ袋に群がる=写真。
 カラス研究の第一人者、杉田昭栄・宇都宮大学名誉教授が『カラス学のすすめ』(緑書房、2018年)という本を出した。図書館の新刊コーナーにあったので、さっそく借りて読んだ。「今でもカラスは黄色が嫌いだと思っている方もいるようですが、(略)カラスに嫌な色はありません。あくまでも紫外線遮断効果がないと効果はないことを、この場でお伝えしておきます」

 色ではなく、紫外線カットができるかどうか、なのだという。「カラスは赤、青、緑、紫外線の四原色色覚をもっている」。これらの一つでもカットできれば、利口なカラスといえども色は識別できない。

 紫外線を透過させないごみ袋、つまり人間には中身が見えてもカラスには見えないごみ袋を企業と共同で開発した。ごみ袋の素材であるビニールにある原料を充填した結果、ごみ袋が黄色になった。実用化されて効果をあげたために、「黄色であれば何でもカラスが寄ってこないと勘違いされた」りしたともいう。この黄色いごみ袋はしかし、単価が高い。思うほどには普及していない。

 ではどうしたらいいのか。結局は、ごみを出す人間の側に問題があって、カラスを引き寄せているのだ、ということになる。カラスはそれだけではない。1羽がネットをくちばしで持ち上げる、別の1羽がごみ袋を引っ張り出してつつく――といった連係プレーまでやる。カラスの脳は体積比でニワトリの10倍もあるそうだから、あなどれない。

 わが区では独自に回覧チラシをつくり、これまでに二度、隣組に配った。「生ごみは新聞にくるんだり、レジ袋に入れたりして外から見えないようにしましょう」「ごみネットと地面の間にすき間があると、カラスが袋を引っ張り出します。重しを置くなどしてネットを開けられないようにしましょう」

 それでも、ごみ出しのマナーがなっていない人がいる。カラスにつけ込まれる。で、注意喚起の紙を電柱にくくりつける――ということが、ときどきおこる。「敵」はカラスか、人間か。「カラス学」の教えに従って、人間向けに戦術を練り直さないといけない。

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