山階鳥類研究所鳥類標識調査員、福島県野生動植物保護アドバイザー(鳥類担当)の川俣浩文日本野鳥の会いわき支部長が、ゲスト講師として「いわきの鳥類調査と生息地保全」と題して話した。
毎年1月中旬、同支部ではガンカモ全国一斉調査に参加する。それにしぼって紹介する。
鳥インフルエンザによるえさやり自粛が始まったあとの2009年、それまで1000羽を超えていたハクチョウの数が700羽に減り、以後、現在まで1000羽を超えることはない。そのなかで去年(2018年)、首に発信機、脚にカラーリングと金属リングのついたコハクチョウが飛来した。山階鳥類研究所を介したロシアの情報から、次のようなことがわかった。
このコハクチョウは2017年8月25日、北極圏のチュコトカ自治管区、チャウン湾で標識放鳥された。放鳥地といわきの新川・夏井川合流点までの直線距離はざっと4000キロ=写真上。実際にはサハリン島(樺太島)の白鳥湖に寄り、北海道から本州へ渡って、新川との合流点の夏井川に到着したのだろう。(前年の2016年、サハリンを旅して、白鳥湖を見た。それからの推測)
川俣さんは野鳥の「生息地保全と開発」についても話した。原発震災後、いわきを中心にした阿武隈高地に七つの風力発電事業計画が持ち上がった。そのまま認められると、スカイライン(稜線)には130を超える風車が林立する。希少種クマタカの生息地がある。いわきで唯一、貴重な渡り鳥の繁殖地となっている山地もある。それらへの影響が懸念される。
いわき支部としては、風車建設の適地・不適地を明確にするゾーニングの条例化を求める要望書を市・県・国に提出したという。
巨大風車をスカイラインに建設するためには機材を運ぶための道路をつくらないといけない。水源地帯のあちこちで大規模な開削工事が行われることになる。例えば、夏井川渓谷。左岸の神楽山にも最大23基の建設が計画されている。
いわき市は2015年、県の調査を踏まえて防災マップを改訂し、新たに土砂災害警戒区域、同特別警戒区域を掲載した。前年8月、広島県の大規模土砂災害を踏まえたもので、夏井川渓谷では人家のある4カ所の沢が「土石流危険渓流」「同危険区域」として書き込まれた。背景には、温暖化で大雨が頻発し、土砂災害が増えていることがある。
台風19号の猛威を経験した今、水源地帯のさらなる開発には危機感が募る。風車建設計画地直下の水源地帯には小集落が散在する。もしも計画通りに風車が尾根筋に建設されたら、景観・環境から始まって、生活用水、土砂災害など、さまざまな問題の発生が懸念される。下流の平地には市街地が広がる。水害の懸念も加わる。
浜通りの河川は、水源から河口まで滑り台のように傾斜がきつくて短い。水源の山々が西方に見える。ここに130基超の風車とは、べらぼうすぎないか。
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