2023年8月14日月曜日

サンゴの化石?

        
 表面に変わった模様のある「石」を見た=写真。形と大きさが鶏のむね肉を連想させる。手に載せると、重い。

「変わった模様」で思い浮かぶのは焼物だ。粘土に直径5ミリ前後の丸い印花(いんか)をすき間なく押して焼くと、こんな感じになるのではないか。

 一つひとつの円は、それぞれ中心から放射状に十数本、線が浮き上がるようにして伸びている。花でいえばキク。つまり、小さなキクの花畑だ。

 ネットで検索すると、似たようなものに「サンゴの化石」があった。福島県立博物館で令和3(2021)年1月30日から3月5日まで、「サンゴ化石の世界」と題するポイント展が開かれた。その解説がわかりやすい。

 ――サンゴはクラゲやイソギンチャクなどと同じ刺胞(しほう)動物の仲間で、石灰質の硬い外骨格をつくるものがサンゴと呼ばれる。

 サンゴの骨格は地質時代を通して化石として残されてきたため、その構造を調べることでサンゴの進化や生態が詳しく解明されてきた。

 最古の確実なサンゴ化石は、オーストラリアの古生代カンブリア紀初期の地層から見つかる床板(しょうばん)サンゴの仲間の化石で、これ以降、四放サンゴ、六放サンゴ、八放サンゴなど、さまざまなサンゴの仲間が登場してきた――。

 なるほど。化石一般にも、サンゴにも全く知識のない人間でも、この化石(と思われるもの)がすごい時間を経て、今ここにあることはわかった。

 粟津則雄いわき市立草野心平記念文学館名誉館長によると、詩人草野心平の特質は「対象との共生感」であり、「眼前の姿への凝視とそれを生み出しそれを支えて来たものへの透視」もまた、心平の本質的な要素であるという。

 たとえば、わずか6行の詩「石」。「雨に濡れて。/独り。/石がいた。/億年を蔵して。/にぶいひかりの。/もやのなかに。」。石もまた人間と同等の存在として、目の前に億年という時間を内蔵して存在している。

 川内村での、こんなエピソードも「凝視と透視」に結び付く。あるとき、心平はまな板用に栗の木の切れ端を村の棟梁に削ってもらう。

住職と一緒の帰り道、木の年輪を見て「君、こっちは北なんだね。こっちは南側だったんだね」という。

「君、同じ南側でも育ち具合が違うんだね。育たなかった年は気候が悪かったんだね。この時は、この木も随分と苦労したろうね。木ばかりでなく、みんな苦労したんだね。凶作だったりして……

心平にならって、「サンゴ化石」を凝視する。このかたまりが生きていたのは遠い海だったかもしれない。暖かい海流の真っただ中だったかもしれない。そこでサンゴたちはどんな夢を見ていたのだろう……。残念ながらそんなレベルでわが想像力、つまり透視力は途切れてしまった。

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