阿武隈の山里で暮らした子どものころ、夏になると「相馬野馬追」と「平七夕まつり」(現いわき七夕まつり)が話題に上った。
大きな夏祭りといえば、月遅れの七夕や盆踊りを除いて、同じ阿武隈川流域の郡山市ではなく、分水嶺を越えた太平洋側の北と南のイベントのことだった。相馬へは大人たちが貸し切りバスで出かけた。
そのころ、叔母が平に、叔父が小名浜に住んでいた。相馬には親戚も、知人もいない。相馬は平より遠かった。
小名浜の全国花火大会(現いわき花火大会)は今年で68回だという。子どものころの記憶と花火大会は、しかし結びつかない。現在のいわき地方で夏祭りの象徴といえば、やはり「平七夕まつり」だった。
7月最後の土曜日(29日)夕方、わが家の近くで花火が2発揚がった。何がある? 7月の終わりに行われる地域の行事ときたら……。
拙ブログにそれがあった。立鉾鹿島神社の「夏越大祓(なごしのおおはらえ)」、つまり「茅の輪くぐり」だった。
後日、いわき民報に記事が載った。境内では4年ぶりに出店が復活したそうだ。花火はコロナ禍で規模を縮小していた「夏まつり」の通常開催を告げるものだったか。
小さな地域の夏祭りも、大きな商店街、あるいは自治体レベルの夏祭りも、こどもにとっては、楽しみという点では「等価」だ。親に連れて行ってもらえる非日常、それがお祭り。
8月最初の日曜日(6日)、夏井川渓谷の隠居で土いじりをした。酷暑に変わりはないが、けっこう強い風が吹いた。昼食をとって一休みをし、午後2時過ぎには隠居を離れた。
同じ小川町の平地に下り、詩人草野心平が生まれ育った旧道を通ると、浴衣を着た女の子(中学生?)が友達と歩いていた。
小川で何かイベントがあったかな? 首をひねったその瞬間、「そうか、平へ行くんだ」と了解した。
あとで磐越東線の時刻表を確かめた。午後2時台だと、小川郷駅発14時48分の列車がある。いわき駅発19時49分の最終列車で帰るとしても、4時間以上は七夕を楽しめる。
この日、平の七夕まつりが開幕した。8日まで3日間、いわき駅前の本町通りを中心に笹飾りが並ぶ。通常規模での開催はやはり4年ぶりだという。
わが家へ戻る前にいわき駅前を通った。国道399号(並木通り)と交差するレンガ通り=写真=も、銀座通りも祭りの見物客でごった返していた。
そうなのだ、平の七夕まつりは平にとどまらない。平の周辺、さらには市域を越えた近隣市町村まで鳴り響いている祭りなのだ。
昔から夏祭りの「中心」だった。今も中心には違いない。そのことを小川の浴衣姿の少女が教えてくれるような気がした。
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