いわき地域学會の第376回市民講座が8月19日、いわき市文化センターで開かれた。市文化財保護審議会委員の四家久央さんが「古文書に書かれた年中行事とその再現――四家家の『定例帳』を中心に」と題して話した=写真。
四家さんは「又兵衛」で知られる四家酒造店(内郷高坂町)の7代目当主。幕末のころ、先祖の四家又左衛門が書き残した「定例帳」など、同家所蔵の古文書を参考に再現した年中行事を紹介した。
「定例帳」は嘉永5(1852)年に下書きができ、安政4(1857)年に清書されたという。市民講座では、旧暦元日から7月まで、事細かに書き記された行事の一部を翻刻して、画像とともに紹介した。
又左衛門は25歳で高坂村の名主を務め、その後、割頭・郷目付、さらには御徒士格・独礼(どくれい=儀式のある日、藩主に謁見する際に一人で進み出ること、またはそれを許された身分)などを経て、天保8(1837)年給人格になった。弘化2(1845)年には酒造の鑑札を得た。
四家家では「定例帳」を基に年中行事を再現している。しかし、現代では手に入らない材料もある。昔からのやり方を継承しながらも、今あるもの、手に入るものでまかなっている。買えるものはそれで間に合わせている、ともいう。
実例として、①正月飾り②5月の軒菖蒲③7月の藁馬(七夕馬)と盆棚飾り――について詳述した。
七夕の藁馬については、6日の夕方、小麦藁を使って馬を2匹つくり、厩のぐしに飾る――と「定例帳」にはある。
四家さんは、この藁馬を飾るために、暮らしの伝承郷などで作り方を学んだ。そうしてつくった2匹の藁馬(雄と雌)を会場に持参した。
面白かったのは、家や土地、あるいは時代による盆棚飾りの違いだ。四家家では13日に若竹4本を切って、盆棚の四隅に立て、小手縄で結びつけたのに杉葉とホオズキの実をはさむ。杉葉にはそうめんをかける。「定例帳」には、ホオズキの実の記述はない。
四家さんの母方の三和町・田子家の盆棚は、杉葉の代わりに檜葉を使い、縄の代わりにビニールひもを利用している。郡山市のおば宅では檜葉にそうめんだけでなく、ワカメもかけるという。
そうめんはもちろん、ゆでたものだ。このそうめんのかけ方だけでも、家によって違いがある。
さらに四家家では、「定例帳」にはないが、昔から米・茶・団子などをカラムシに包んだ「冥途のみやげ」を用意する。
四家さんは、行事の再現に当たっては古文書に書いてないから「やっていない」のではなく、「当たり前で書くまでもないと判断したかもしれない」、そういった疑問を持って常に検討する必要があると語った。
旧家が実施する年中行事にも試行があり、変化があることと知って、なぜかホッとした。
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