2023年8月16日水曜日

なじみのルートで田村市へ

                      
 いわき市のわが家から田村市常葉町の実家(国道288号沿い)へ行くには、いくつものルートがある。

一番西側のルートは国道49号~同349号~県道船引大越小野線~国道288号、同じく東側のルートは「山麓線」(いわき浪江線)~国道288号だ。

 この中間には、小川町からの国道399号~同288号、川前町からの県道上川内川前線~同小野富岡線~国道399号~同288号ルートがある。

 国道399号は「十文字トンネル」ができたことで、山越えの難所が解消され、かなり時間が短縮されるようになった。

新しいところでは、磐越道を利用して田村市大越町の「田村スマートIC」で下り、既存のルートに出る方法もあるが、このICは「ETC専用」なので、カードを車に装着していないと利用できない。

どのルートを選ぶかはそのときの気分次第でもある。夏井川渓谷の隠居を経由する場合は、夏井川に沿ってそのまま田村郡小野町へ駆け上がるか、左岸の山中に分け入って川内村から田村市に向かうか、のどちらかだ。

今回は若いときからなじみのある夏井川沿いのルートを選んだ。夏井川だけでなく、磐越東線ともほぼ並行して道が続く。

ふだんの日曜日は先行車両も、対向車両も少ないのだが、月遅れ盆の入りの朝ということもあって、どちらにも車の列ができていた。

渓谷には飛び飛びに小集落がある。集落が現れるたびに、何台か道端に車が止まっていた。周辺には黒ズボン、白い半そでシャツ、黒ネクタイの人たち。

おもしろいことに、いわき市と小野町の境あたりになると、車の往来が途切れる。新盆回りをするほどにつながりが濃いわけではない、ということなのだろう。

小野町の夏井地区に入ると、じゃんがら念仏踊りの一行が目に留まった。元は同じ田村郡だったわがふるさとには、じゃんがら念仏踊りはない。

いわきの「じゃんがら文化圏」は、夏井川流域では小野町まで及んでいる――。仲間の調査研究をこの目で確かめるような出会いだった。

小野町を過ぎて田村市滝根町、そして同大越町を通る。すると、「このへんで車のバッテリーが上がったんだよね」「このへんに古い建物があったはず」などと、カミサンが問わず語りにいう。

私もこのルートを利用するたびにバッテリーが上がって、道路沿いの農家に助けてもらったことを思い出す。

古い建物は、一つは医院。もう一つは、旧「大越娯楽場」=写真=だった。あとで田村市のホームページで確かめると、娯楽場は平成19(2007)年7月31日、田村市初の国登録有形文化財になった。

この建物は大正15(1926)年5月に完成した。設計は建築学者で民俗学研究者の今和次郎。舞台と桟敷(さじき)席が設けられ、芝居や映画などの興行が行われた。

その後、町の公民館や教育委員会の事務局などに転用され、現在は武道館として利用されているという。

今和次郎とは、阿武隈の山里の先人もなかなか目が高かったと、これは「考現学」を聞きかじった人間の独り言。

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