2023年12月13日水曜日

ストーブ要らずの日

                            
 12月10日の日曜日は街でいろいろ用を足してから、夏井川渓谷の隠居で過ごした。

 回覧資料を配ったあと、開店時間に合わせてホームセンターへ寄り、街の書店などをのぞいてから、スーパーで昼の弁当その他を買って渓谷へ向かった。いつもとは逆のパターンだ。

 空は晴れ渡り、風もない。白い雲がほんの少し山際にあるだけだった。毎日曜日、隠居の庭にある畑に生ごみを埋める。この時期になると、表土の凍結が始まる。

 ところが、10日はスコップがすんなり入っていく。凍り始めどころか、湿っていてやわらかい。1週間前には土が少ししまってきた感じだったのだが……。

 ネギのうねもスコップがすんなり入っていくので、簡単に「根深(ねぶか)」を引き抜くことができた。冬の作業はこの二つだけ。30分もあれば土いじりは完了する。

 隠居に着いたのは11時半ごろ。ちょっと体を動かしただけで正午になった。寒さは全く感じない。庭に突き出た濡れ縁で、つまり外で弁当を広げた。

 すると、隣の錦展望台でも同じようなことが起きた。老夫婦が備え付けのテーブルといすに陣取り、葉を落として白骨となった対岸の林を眺めながら、弁当を食べ始めた。

 師走の中旬だが、上着を1枚脱ぎたくなるような陽気だ。私らだけでなく、行楽に訪れた夫婦も、車中ではなく外で食べよう、となったのだろう。

 あとでいわき市内の最高気温を確かめる。平地の山田町では午後1時近くに22.0度、同じく小名浜では19.7度、隣の広野町では22.2度まで気温が上がった。

 暖かいはずだ。まぶしい昼の光のなかで、隠居の庭のシダレザクラ(エドヒガン)が「白糸の滝」のように輝いていた=写真。

 国の天然記念物に指定されている三春の滝桜は阿武隈高地では最大の古株(エドヒガン系のベニシダレザクラ)だ。

 花盛りの春が人気だが、滝桜の本領はむしろ葉を落とした冬の枝ぶりではないだろうか。それこそ「滝桜」のゆえんではないか――。

 白糸の滝の連想でそんなことを思ったが、それもこれも白い枝が光を反射して、まぶしいくらいに自己を主張していたからだ。

 ただし、撮った写真を拡大したり、縮小したりしているうちに、「山姥(やまうば)」の白髪のように見えてきたのも事実だが。

 それはそれとして、この師走の暖かさは「地球沸騰化」の文脈で考えると、少しもうれしくない。

 逆に、こんなに暖かくていいのだろうかと、不安になる。昼食のあとはガラス戸を開けたまま、こたつに足を突っ込んで昼寝をした。

 寒暖の波は大きい。油断はできない。が、この日はわが家に帰っても石油ストーブをつけずに過ごした。

0 件のコメント: