この出合いは僥倖(ぎょうこう)というほかない。夏井川渓谷の隠居へ行くのに、平・平窪の田んぼ道を通っていると、車の前方すぐ上にハト大のタカが現れた。
すぐカミサンが助手席からカメラを向けた。何コマか撮ったうちの1枚がこれ=写真。翼の下面は白っぽくて尾が長い。頭は丸い。かぎ状に鋭く曲がったくちばし、目からほおに伸びた黒班。チョウゲンボウにちがいない。
夏井川の河川敷を散歩していたころ、ときどきチョウゲンボウに出合った。東日本大震災の前、平成20(2008)年3月のブログに最初の記録がある。それを要約して紹介する。
――散歩にはカメラと双眼鏡を欠かさない。夏井川の堤防や河川敷にも季節の花が咲き、野鳥がやって来る。カメラは主に花やハクチョウを撮るため、双眼鏡は野鳥を観察するためだ。
ここ何日か国道6号バイパスの終点、夏井川橋でハヤブサの仲間のチョウゲンボウを観察している。
いつもの散歩コースをたどって橋に近づく。と、橋脚に取り付けられた作業台の柵に、黒く小さなかたまりがくっついている。
この橋では3年続けてチョウゲンボウを観察した。平成20年は1羽だったが、その前の2年間はつがいで羽を休めていることが多かった。4羽になったときもある。
橋の下にはヨシ原が広がっている。チョウゲンボウの大好きなノネズミなどが生息しているのだろう。
「キキキキキキ」。あるとき、けたたましい鳴き声が響き渡った。見ると、チョウゲンボウがどこからか飛んで来て、橋げたに止まるところだった。
休んでいるときのチョウゲンボウは実に物静かだ。太陽が殊のほか好きなのか、夕方は夕日に向かってじっとしている。朝は朝で、朝日に向かってじっとしていることが多い。
ただし警戒心は強い。堤防から眺める程度ならチョウゲンボウも平気だが、河川敷に降りて橋脚に近づくとすぐ逃げられる。間合いを測るのが難しい鳥だ――。
それから1年2カ月後。――車で堤防を通っていたら、すぐ近くでチョウゲンボウがホバリングをしていた。
堤防よりはすこし高い程度の空中から河川敷を凝視している。車を止めて窓から後ろ姿をバシャバシャやった。後方に車が来て止まったことをたぶん察知したはずだが、狩りはやめない。珍しく何コマも撮った――。
震災後、ドクターストップがかかって散歩をやめた。チョウゲンボウが今も夏井川橋をねぐらにしているかどうかはわからない。
が、車で堤防を通っていると、たまにそれらしい鳥に出合う。つい先日、街からの帰りに堤防へ出ると、前方上空に尾の長いタカが飛んでいた。そんなに大きくない。すぐチョウゲンボウだとわかった。
平窪のチョウゲンボウはそれこそ車の目と鼻の先に現れ、強風のなかでバランスをとりながらそばの電線に止まった。
またとないシャッターチャンス。とはいえ、ほどなく後続車がやって来てクラクションを鳴らした。チョウゲンボウ観察はそれで打ち切った。
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