冬はちっぽけな家庭菜園でも農閑期に入る。ネギしか栽培していないので、「農閑期」などという言葉を使うまでもないのだが、とにかく冬はやることがなくなる。
夏井川渓谷の小集落に隠居がある。10月下旬に後輩が庭の草を刈ってくれた。あれほど猛烈な勢いで再生・繁茂を続けていた緑も、秋以降はおとなしくなった。
夏は土いじりの合間に、気分転換を兼ねて庭を巡った。庭は広い。二段になっている。古い言葉でいえば「分教場の校庭」くらいはある。
師走に入った今は庭巡りの合間に、苗床のネギや辛み大根の様子をチェックする。その庭に、しばらくなかったタヌキ(たぶん)のため糞(ふん)ができていた。
これが、ため糞か――。最初に気づいたのは令和3(2021)年2月。下の庭のヘリに沿って立ち枯れの灌木がある。真冬、エノキタケの有無を確かめに行ったら、庭の隅が糞だらけだった。
ときどき、生ごみを埋めた跡がほじくり返される。震災前の師走には、真っ昼間、対岸から水力発電所のつり橋を渡って来るタヌキを目撃した。
それで、畑の穴ぼこと下の庭のため糞がタヌキで結びついたのだが、この1年余りは、糞はどこにも見当たらなかった。
この師走は、それが上と下の庭の2カ所にできていた。複数のタヌキが出入りしているのか。あるいはハクビシンもため糞をするというから、どっちかはそれなのか。
12月10日の日曜日には、さらにカミサンが下の庭の「異変」に気づいた。一見、枯れヨシのような、白く長い茎があちこちに散らばっている。
下の庭もきれいに刈り払われたから、丈の高い草はない。カミサンが下の庭へ下りて確かめると、クズのつるだった。
つるを引っ張ると、節々が地中に根を張っている。それをカミサンが鎌で切りながらはがした。
毎年のことながら、夏場、草が生い茂ったところに、クズが覆いかぶさるようにつるを伸ばし、葉を広げる。
草刈りを怠ると、クズは下の庭から石垣を伝ってはい上がり、上の庭を匍匐(ほふく)して、テーブルを、濡れ縁を覆う――そんなイメージがわくほどの勢いで迫ってくる。放置していたら雨戸をはい上がり、屋根を越えて家全体を覆いかねない。
そのつるを利用して籠(かご)をつくる人間がいた。葉が散った11月になると、隠居へやって来て、庭のつるを刈り集める。その彼女が彼岸へ渡った今は、つるの刈り取りは遠い思い出になった。
タヌキのため糞、クズのつる――。地べたを眺めてわかった異変だが、隠居のそばの「キノコが生(な)る木」をチェックしていたら、これまた冬らしい光景に出合った。
頭上からか細い声が降ってくる。見るとエナガだった=写真。エナガは、尾が長い。シジュウカラやコガラなどと混群をつくることもあるが、今回はエナガだけが数羽やって来た。
思わぬバードウオッチングに眼福を感じていたら、カエデの木の根元にウスタビガの繭があった。それについてはあしたにでも。
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