2023年12月5日火曜日

最後の紅葉

                      
 いわきの平地のカエデも、真っ赤に燃えあがってきた。

 カエデは生命力が強い。夏井川渓谷にある隠居の庭に毎年、実生のカエデが現れる。それをカミサンがポットに移したのが何本か大きくなった。

 その幼木をわが家の庭に植えたら、いつの間にか1階の屋根を超えるまでに生長した。そばにある柿の木も含めて、後輩に剪定してもらったことがある。

 柿の葉などが落ちた11月下旬から師走にかけて、そのカエデが赤く燃え上がる。同じころ、夏井川渓谷ではあらかたカエデが散り始め、畑ではネギの収穫が真っ盛り、となるのだが……。

渓谷の隠居にある畑では、三春ネギだけを栽培している。ほかに、やはり実生で育つ辛み大根の葉が畳2枚分くらいのスペースを覆っている。

来年定植するネギの苗床のわきに、去年からの古い苗床がある。取り残したネギ苗が少しある。苗といっても白根がないだけで、大きな葉ネギのようなものだ。

12月3日の日曜日、残りの苗を全部取り、さらに今季初めてうねの一部にスコップを入れてネギを収穫した。

 白根を長くするには溝を深くする。しかし、地下水がたまりやすいので、最近は浅く植えて土を高く盛る方法に切り替えた。

 溝を深くすると梅雨どきにネギが根腐れをおこすことがある。それを避けるために、たとえば郡山市の阿久津地区では月遅れ盆のころ、一度掘り起こして溝を斜めに切って植え直す。いわゆる「曲がりネギ」で、師走ごろに収穫・出荷が始まる。

 土地の人が「三春ネギ」といい、私も子どものころはそのネギを食べていたので、まだ体力があるころは、隠居でも曲がりネギにしていた。今はその作業がきつくなったので、まっすぐのネギにしている。

 ネギの初収穫を頭に置きながら、渓谷に入る。カエデについていえば、磐越東線の江田駅を境に、夏井川の上流側、つまり隠居の周辺ではカエデがあらかた散った。ところが、江田駅から下流側ではまさに紅葉の絶頂だ。

平野部からいえば、磐東線の上小川トンネルに接続する磐城高崎踏切を渡り、地獄坂を上りきると夏井川渓谷に入る。

すぐロックシェッドが待ち構えている。この構造物の出口付近がまるで額縁のようになって、その先にあるカエデの紅葉を切り取る。構図的にはこれが一番おもしろい。

11月26日の日曜日、カミサンがそれに気づいたが、私が車を止めずに通り過ぎたので、カメラが間に合わなかった。それから1週間後、ロックシェッドが近づくとカミサンがカメラを構えてパシャッとやった=写真。

この燃えあがる「絵」も今度の日曜日には葉が散ってスカスカになってしまうことだろう。これこそが、変転してやまない自然がほんの一瞬、垣間見せる美しさといっていい。

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