2024年4月12日金曜日

石炭ができたワケ

                     
 なるほど、なるほど――。「なるほど」一つでは足りないくらいの納得感だった。植物と菌類(キノコやカビなど)の関係を論じた啓蒙書を読み始めてすぐのことだ。

 前に紹介した斎藤雅典編著『もっと菌根の世界――知られざる根圏のパートナーシップ』(築地書館、2023年)の「序章・菌根とは何か」に出てくる=写真。

 ネギもまた菌根共生をする。菌と共生すると生育がいい、と知ったあとに、それが記されていた。

 「植物と菌の出合い」の項目、つまり地球規模の歴史の中で、あっさりと述べられている。シロウトにはそのことが驚きだった。

 石炭ができたワケは、科学の知見からいえばそうなのだろう。そして、炭鉱が基幹産業だったいわき地方の人々にとっては常識だったのかもしれない。

が、15歳まで阿武隈の山里で暮らした人間には、石炭を菌類レベルから考える発想はなかった。

全く単純なことだ、といってもいいかもしれない。「チコちゃんに叱られる」風にいえば、「石炭ができたのは菌類がいなかったから」となる。

地球が誕生したのはざっと43億年前。やがて生物が生まれ、進化を重ねて、4億5千万年前ごろ、水中から陸上へと植物が進出する。

さらに3億5千万年前、シダ類が巨大化し、大森林が出現する。植物の体はリグニンなどによって構築されたが、それを分解する微生物はまだ現れていなかった。

その大森林を構成していた巨木が倒れ、湿地に埋まり、土中深く積み重なって、今の石炭になった。

一方で、石炭紀の終盤ともいえる3億年前ごろになると、リグニンを分解できる担子菌(白色腐朽菌と呼ばれるグループ)が登場する。

この菌の出現によって、リグニンを含む樹木はほかの有機物と同様、分解されるようになった。というわけで、石炭ができたのは菌類がいなかったから、なのだった。

植物は生産者、動物は消費者、菌類は分解者――。菌類は菌根共生もするが、分解もする。

リグニンがなぜ残ったのか、つまり樹木がなぜ分解されずに石炭になったのか、逆から発想すれば、おのずと答えは見えていたのかもしれない。

ともあれ、産業革命以降、人類は地中から化石燃料を掘り出し続け、石炭が閉じ込めていた二酸化炭素を大気中に放出し続けてきた。それが何をもたらしたかは、私がいうまでもない。

43億年という長い地球の歴史のなかでは、温暖化があり、寒冷化(氷河期)があった。大きな寒暖の波があるとはいえ、現代の温暖化は「地球沸騰」ともいわれるほど、人類がもたらしたものだ。まさかキノコから地球温暖化を考えるとは思ってもみなかった。

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