2024年4月22日月曜日

誤認による食中毒

            
 春は山菜、秋はキノコ。自然の食材がいろいろ手に入るという意味ではその通りなのだが、この時期には誤認による食中毒も多くなる。

 先日の県紙に、いわき市内の夫婦が有毒のバイケイソウをウルイ(オオバギボウシ)と誤認して食中毒になった、という記事が載った。

 さいわい命に別状はなかったようだが、春になると、このバイケイソウを誤食する事故が後を絶たない。

 バイケイソウは、一般には高山植物に分類される。いわきに高山、あるいは亜高山はあるのか――となれば、「ないよなー」となる。

 しかし、『福島県植物誌』によると、三和町や田人町の山地にはこのバイケイソウが自生している。

 植物が専門の高校教師を先生に、仲間で「山学校」をしていたころ、田村市の大滝根山やいわき市の四時川渓谷などでバイケイソウの若葉を見たことがある。入遠野川支流の大風川渓谷(古殿町)でも出合った。

新聞記事に載った食中毒の経緯は――。夫が日曜日(4月14日)、いわき市内の山から「ウルイ」を採取し、その日の晩、チャーハンの具材に加えて食べた。1時間もすると嘔吐、吐き気、下痢、めまいなどの症状があらわれ、救急搬送された。

いわき市のホームページには、①令和2(2020)年4月=知人からウルイといわれて譲り受けたのを油炒めにして食中毒に②同4年3月=自分で誤認して採取し、酢味噌和えにして食中毒に――と、2例のバイケイソウ中毒事故が紹介されている。

バイケイソウをウルイと思って誤食するのは、もしかしたら春の典型的な例なのかもしれない。

山菜がらみの食中毒だけではない。秋にはキノコの食中毒事故が起きる。いわきキノコ同好会は年に1回、会報を発行している。全国のキノコ中毒例が掲載される。

3月末に発行された第29号=写真=にも載る。令和5(2023)年度中に国内では二十数件のキノコ中毒事故が発生した。

そのなかで最も多かったのが10~11月のツキヨタケの中毒事故だった。親戚がムキタケと思って採取したものをもらった、道の駅でムキタケとして売っていた、ヒラタケ、あるいはシイタケと思って採取した――いずれも誤認(誤食)が原因だ。

ツキヨタケは夏井川渓谷にも発生する。生長したものはホットケーキより大きい。見た目は確かに、ムキタケやヒラタケに似る。

迷ったら1個、木からはがし、傘を縦に割いて柄の付け根を見る。黒っぽいシミがあれば毒、つまりツキヨタケであることがわかる。

「ツキヨタケを採って家に持ち帰り、夜、部屋の明かりを消したら光った」。いわきキノコ同好会の仲間には、食・毒を超えてキノコの生態や形態に魅了されている人が多い。まずは毒キノコを覚える。それが中毒を減らす近道、ということになる。

0 件のコメント: