キノコ図鑑で学んだ固定観念といってもいい。植物は生産者、動物は消費者、菌類は分解者。自然界はこの生産~消費~分解の循環で成り立っている、と思い込んでそれ以上深く考えることはなかった。
が……。いつのころか、木材腐朽菌(分解=シイタケやヒラタケなど)のほかに、菌根共生(生産=マツタケなど)というものがあることを学んで、モヤモヤした思いがふくらんできた。
そのモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのが、斎藤雅典編著『菌根の世界――菌と植物のきってもきれない関係』(築地書館、2020年)だった。
菌根菌は陸上植物の約8割と共生関係を結んでいる。菌根が地球の緑を支えていると言えるだろう――。
キノコ、あるいはその仲間のカビなどが地球の緑を支えている! 蒙(もう)が啓(ひら)かれる思いがした。
菌根共生とはこういうことらしい。菌が土中のリン酸や窒素を、菌根を通して宿主である植物に供給する。宿主は光合成で得られた炭素化合物を、菌根を通じて菌に供給する。土中でもちつもたれつの関係を維持している、というのだ。
コロナ禍が収まって、去年(2023年)9月に常磐共同ガスのガスワンふるさと教室が再開された。これまでのつながりで3月の講師を引き受けた。
以前はいわきの文学や地域新聞をテーマにしていたが、令和元(2019)年には熱帯地方のキノコであるアカイカタケがいわきで発見されたことを中心に話した。
それから4年ちょっとたつ。が、菌根共生は今までの自然観を修正するような、強烈な概念だった。今回もそのことを中心にキノコの話をすることにした。
題して「文化菌類学の楽しみ」。文化人類学にひっかけて、勝手に文化菌類学と呼んでいる、そのワケは――。
研究書ではなく啓蒙書、論文ではなく小説やエッセーなどを読んだり、キノコの登場する絵を見たりするのが好きだから、といってもよい。
ふるさと教室のレジュメをつくっているなかで、『菌根の世界』の続編が去年(2023年)、同じ出版社から刊行されていることを知った。
図書館にあったので、さっそく借りて読んだ。斎藤雅典編著『もっと菌根の世界――知られざる根圏のパートナーシップ』=写真。
地球の緑は30万種を超えているといわれるように、多様な植物から成る。その8割以上の種の根には菌根が共生している。ほとんどの植物の根は菌根を有しているという。
菌根共生がいつ始まったのか。地球誕生からだいぶたった4億5千万年前、不毛の大地に植物が現れ、何かの拍子に菌と出合い、お互いを利用しあう関係ができた。そんな成り立ちを経て菌根共生が出来上がった。
続編で驚いたのは、ネギもまた菌根に支えられているということだった。今度ネギを掘り取る機会があったら、じっくり根を、菌根を見てみよう。
それからもう一つ、石炭ができた理由がよく分かった。それについてはいずれ紹介したい。
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