4月の1日は月曜日。新年度の始まりと、NHKの新しい朝ドラ「虎に翼」の始まりが一緒になった。
「虎に翼」は、日本初の女性弁護士・裁判官になった三淵嘉子(1914~84年)がモデルだという。今は昭和初期の東京が舞台。主人公はまだ学生だ。
女学校を卒業した主人公猪爪寅子が明律大学女子部に入学する。法律を学ぼうとしたのは、ひょんなことで明治民法に疑問を持ったからだ。
女性は結婚すると「無能力者」になる。ハア?――。そうか、主人公は「新しい女」の側に身を置いているのだ。
「良妻賢母」や「男尊女卑」の世界から飛び出して、自分らしく生きる、そうした女性を守る「盾」として法律家になることを決意する。
「新しい女」の淵源は明治44(1911)年に発行された雑誌「青踏」だろう。平塚らいてうを発起人に、与謝野晶子や伊藤野枝、田村俊子らが集った。
男性につき従う「良妻賢母」の殻を破り、自我の確立を主張する、その先陣を切ったのは、しかし、いいとこのお嬢さんたちだった。
高等教育を受けていて、物おじをしない。ときに、世間が眉をひそめるようなこともする。「虎に翼」の主人公も、どちらかといえばこちら側のお嬢さんだ。
そんな時代の表と裏を思い起こさせるシーンがあった。男装の女子学生山田よねは、上野歓楽街の「カフエー燈台」で「ボーイ」として働く苦学生だ。いいとこのお嬢さんではない。
男装にこだわるのは、たぶん男になめられてたまるか、という気持ちの表れだろう。男尊女卑に抗う手段として男装する、というのは、むしろ男性優位を認めてしまうことになりはしないかと、令和の男は考えてしまうのだが、ここではそこに深入りしない。
そのころのカフェーについては、前にちょっと触れた。林芙美子や佐多稲子、平林たい子らも若いころ、「女給」として働きながら作家を目指した。
いわきでも大正時代にカフェーやバーが開業し、女性給仕員、いわゆる女給の仕事が生まれた。
やがて濃厚なサービスをするところも出てくるが、女給といえば、すその長いエプロン姿というイメージが定着する。
ちょうど野口孝一著『明治大正昭和 銀座ハイカラ女性史――新聞記者、美容家、マネキンガール、カフェー女給まで』(平凡社、2024年)=写真=を図書館から借りて読んでいたところだった。
朝ドラでは上野の「カフェー燈台」をのぞき、本を開いては銀座にひしめくカフェーを追う。
カフエーは銀座から周辺へ、地方へとひろがり、関西系カフェーが参入して、サービスをエロ化するところも現れる。
そんなカフェ―文化がおぼろげながら頭に入りつつあったので、どうしても今は男装の山田よねから目が離せない。
山田よねがこれからどう変貌し、寅子とどうからんでいくのか。当面はこのへんに絞って朝ドラを見る。
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