2024年8月6日火曜日

羽化したセミを見る

                             
 退院と同時に、日常の暮らしが戻った。これもその一コマだろう。7月下旬の早朝、カミサンが羽化したばかりのセミを手のひらにのせて家に戻って来た。

 道路向かいに故伯父の家がある。玄関先の庭木に羽化して間もないセミが止まっていたのだという。

 セミの羽化は夜に行われるようだから、時間的にはかなり経過していたのかもしれない。

3センチほどの茶色い抜け殻が付いていた。羽は透明で白っぽい。すぐわが家の玄関先にあるフヨウの葉に止まらせた=写真。

それからセミの種類を特定するため、検索をかけた。羽化したばかりのミンミンゼミは、背中が緑っぽい。それとは違う。前胸の背中にはやや茶色がかった大きな斑点。アブラゼミだった。

 それから30分後、フヨウの葉を見ると、羽化したセミの姿がない。地面に落ちたわけでもなさそうだ。

近くからセミが飛び立ち、少し離れたミョウガの葉陰に消えた。すっかりアブラゼミの体色、羽の色に変わっていた。

 これはわが家の庭での「経験則」だ。6月末にニイニイゼミがささやきはじめ、やがて日中、アブラゼミとミンミンゼミが歌い、8月中旬にはツクツクボウシが鳴き出す。

ところが近年は、そんな単純な流れではなくなった。3年前の記録によると、7月下旬にはミンミンゼミを抜いてツクツクボウシが鳴き出している。

 今年(2024年)もまた、ミンミンゼミのあとながら、ツクツクボウシが7月のうちに鳴き出した。

「蝉しぐれ」のピークは7月下旬から8月上旬にかけてだろうか。特にミンミンゼミは、未明の4時過ぎには鳴き出す。

最初はミンミンミーとつつましい。やがて日が高くなるとつんざくように、ミンミンミンミンミー、ミンミンミンミンミー……

橋本洽二『セミの生活史』(誠文堂新光社、1991年)によると、いろんなセミの歌がある。
 だれでも知っている鳴き方、たとえばミンミンゼミの「ミーンミンミンミー」、アブラゼミの「ジージリジリジリジリ…」は、便宜的に「本鳴き」と呼んでおく、と著者はいう。

その伝で、1、2回鳴くごとに転々と場所を変える「鳴き移り」、恋歌でもある「さそい鳴き」、鳴いていないときにポツンと出す「ひま鳴き」、人間につかまったときの「悲鳴」などがあるそうだ。

そして、近くに寄らなければ聞こえない弱い音「つぶやき」があるという。ミンミンゼミなら「ワーンワーン」。字に書けば「ワ」音の連想でにぎやかに聞こえそうだが、私の聞いた「ささやき」が著者のいう「つぶやき」と同じなら、ささやかな音だ。その音は超音波のように透き通っている。

しかし、やはりセミの鳴き声の「聞きなし」は今年もできなかった。ただただミンミンが鳴き、合間を縫ってツクツクが鳴いている。

暑くて聞きなしどころではない。もう立秋(8月7日)だというのに、茶の間の軒下まできてミンミンゼミが鳴いている。これはこたえる。

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