2024年8月31日土曜日

「熊のような動物」

                        

   県紙は、ツキノワグマが生息している会津地方では「熊を目撃」、生息が確認されていない浜通り、たとえばいわき地方では「熊のような動物を目撃」と表現を変えるようになった。

「熊のような動物」には、クマかもしれないが、クマではないかもしれない、といったニュアンスがある。夕刊のいわき民報も、本文では「クマのような野生動物」になっている=写真。

いわき市民に対する市の注意喚起情報からして慎重だ。先日の防災メールの内容をざっくり紹介する。目撃された日時と場所以外は定型文だ(原文は「ですます」調)。

――8月27日午前5時ごろ、大久町小久字伏木田地内で、大きさ70~80センチのツキノワグマと思われる野生動物の目撃情報が寄せられた。

警察が同日午前中、現場を確認し、付近をパトロールしたが、ツキノワグマのフンや足跡その他の痕跡は発見されなかった。

いわき市内では、ツキノワグマが生息(定着)している可能性は低いとされるが、ツキノワグマの行動範囲は広く、エサを求めて市域外から往来している可能性はある。

ツキノワグマは早朝や夕方に行動が活発になるといわれているため、同時刻に農作業や散歩などをする場合は注意してほしい――。

いわきにクマは生息していない。今までの私ら市民の認識ではそうなるので、市街地から沿岸部での目撃情報には、ほかの動物と見間違えたのではないか、という疑問が残る。

しかし、田村郡や双葉郡などと接している山間部では、そうはいかない。足跡が発見されることもあって、実際にクマが現れたのだと緊張が走ることがある。

今年(2024年)1月下旬には、三和町中三坂字湯ノ向地内でクマが目撃され、付近の畑でクマのものと思われる足跡が確認された。

 1月25日付のいわき民報によれば、狩猟免許を持つ住民が同20日午後3時ごろ、湯ノ向地内でクマ1頭を目撃した。体長は約80センチだった。

同じ阿武隈高地の田村市船引町で令和3(2021)年初夏、ツキノワグマがイノシシ用の罠にかかったことがある。

捕獲場所はJR磐越東線磐城常葉駅の西方、「田村富士」と呼ばれる片曽根山(718メートル)の南麓に広がる水田地帯だ。

阿武隈高地の分水嶺から西側に特有の、穏やかな「準平原」である。皮肉といえば皮肉だが、それで阿武隈高地にもクマが生息(往来)していることがわかった。

「阿武隈の山にはクマはいない」。昔からそういわれ、私もそう思ってきたが、最近はあちこちで姿や足跡が目撃されるようになった。

 現時点ではこう考えた方がいいのだろう。いわきには、クマは生息していない。が、阿武隈高地には生息・往来の可能性がある。つまり、市域外からやって来る可能性は否定できない、と。

 小久の伏木田地内をグーグルアースでチェックすると、久之浜から四倉へと抜ける山あいの県道沿いで、両側に細く長く田んぼが伸びる。

 クマが出没してもおかしくはないが、やはりポツンと現れた感じが強い。県紙の表現が「熊のような動物」になるのもうなずける。

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