10月10日は、かつては国民の祝日「体育の日」だった。今は「ハッピーマンデー」制度によって、10月第2月曜日「スポーツの日」がそれに代わった。
祝日だから、あるいは「だった」からというわけではない。10月10日は、私にとっては特別な日だ。
隠居のある夏井川渓谷の集落では、昔からこの日を「三春ネギ」の種をまく基準日にしている。
私もそれにならって、10月10日前後の日曜日に、畳半分ていどの苗床をつくって三春ネギの種をまいてきた。
三春ネギは、その名前の通り田村地方から小野町を経由して、夏井川渓谷の集落へ伝わったにちがいない。
郡山市の「阿久津曲がりネギ」もやはり秋まきだ。三春ネギは阿久津曲がりネギと同種、あるいは同系統のネギだと私は思っている。春に種をまくいわきの平地のネギとは系統が違う。
田村地方では、阿久津と同様、曲がりネギにする。そのネギを食べて育った。25年余り前、集落の住民から苗をもらい、育て、種を採ったものの、3年ほど種の保存に失敗した。
種は冷蔵庫で保存する、と知ってから、やっと自前で採種・播種ができるようになった。
ふるさとの習慣に従って夏に掘り起こし、「やとい」(斜め植え)をして曲がりネギにした。渓谷ではしかし、そんなことをしない。定植したままでまっすぐの一本ネギにする。
曲げるかまっすぐにするか、まっすぐなら手抜きができる。年も取ったし――というわけで、7年前からは植えたままにしている。
事前の準備がある。9月後半になると苗床を決めて耕し、石灰をまく。次の日曜日には肥料をすき込む。
そして、10月10日に近い日曜日。苗床にたっぷり水をやって土をならし、板を使って深さ3~5ミリの溝をつくり、黒い種を筋まきにする。
まいたら溝の両側から土をかぶせて、種が雨で露出しないようにする。すると、次の日曜日には、種のすぐ上の土が筋状に割れてくる。その割れ目から発芽しつつある緑色のネギ苗がのぞくようになる。
夏にネギ坊主を摘み取り、ごみとカラの種を取り除いて小瓶に入れ、種まきまで冷蔵庫で保管した。
10月13日の日曜日、筋まきをしたが、半分近くは余った。ネギの種の寿命は短い。が、2年は持つ。来年用に小瓶ごと、また冷蔵庫にしまった。
実はこの日朝、小野町のNさんが江田駅前の道端で直売所の小屋づくりを始めるところだった。
1年ぶりの再会だ。「長芋は、今年はよくない」「曲がりネギは?」「大丈夫」。ネギは砂漠生まれだから乾燥には強い。今夏は酷暑続きだった。それが明暗を分けたようだ。
種まきが終わると、なにか大きな仕事をしたような心境になった。久しぶりの解放感も手伝って、マイクロツーリズムをしたくなった。
カミサンの希望で川前から山越えをして三和に下り、ふれあい市場で漬物と梅干しを買った。昼食はしかし、どこも込んでいた。結局、好間まで下りて、そこですませた。
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