2008年3月15日土曜日
ムシカビ
冬虫夏草に詳しい某新聞社の支局長がいる。私と同い年で、4月には定年退職をする。実質的にはすでに自由の身になっているらしい。
ある酒席で菌類の話になった。というより、会ってしゃべると、いつか菌類の話になってしまう。
「夏井川渓谷は冬虫夏草の宝庫だと思うよ。いろんな昆虫が生きてたときの姿のままで死んでる、節々が白くなって。この前はカマキリがそうだった」
支局長氏は「ン?」といった表情になって、
「それはムシカビじゃないのかな」
「えっ、ムシカビってのもあるの?」
冬虫夏草とムシカビの違いは菌類でいう「柄」があるかないか、だという。
そういえばカマキリには柄がなかった。ただのムシカビというわけか。
後日、ネットで調べたら「昆虫病原糸状菌という意味では冬虫夏草の仲間だが、冬虫夏草のようでないムシカビ。蚕の硬化病の原因となる白きょう病菌の仲間」とあった。
支局長氏が関係している日本冬虫夏草の会のHPは、冬虫夏草研究の第一人者、故清水大典氏の見解として、未記録の寄主例としてカブトムシやクワガタ、カミキリムシの成虫などがあり、これらの虫から不完全型ではない、子嚢(しのう)果(「柄」の先にできる袋状の結実部=普通のキノコで言えば「傘」か)の生じた冬虫夏草が見つかれば間違いなく新種、という話を紹介している。
夏井川渓谷にある無量庵の庭では、カマキリのほかに、イナゴ、ガなどのムシカビも見つかっている。唯一、トンボだけは節から「柄」が出ていたから、冬虫夏草のヤンマタケ(不完全型)だった。
今年も正月明けに無量庵の庭をじっくり見て回ったら、木の幹にぴたっと止まった状態で菌にやられたカミキリムシがいた。図鑑に当たるとキボシカミキリの雄らしかった=写真。一瞬、「新種?」と胸がときめいたが、そうは問屋が卸さない。これもムシカビである。
こうして注意深く見ていれば、いつかは夏井川渓谷産の新種の冬虫夏草に出合える、というのは能天気すぎるか。
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