2008年3月20日木曜日

天の蛇口


けさ(3月20日)、雨上がりのすきをついて散歩へ出かける。全天、鉛色の雲。

住宅が軒を連ねる小道で、胸から脇が黄橙色のアカハラに出合った。冬鳥のツグミとほぼ同じ大きさの漂鳥だ。久しぶりの対面である。

国道6号を横断し、夏井川の堤防へ出る。頭上に架けられた夏井川橋をうかがうと、いた。チョウゲンボウが橋げたに1羽、近くの橋脚の作業台にもう1羽。すでにつがいになっていたのか、つがいになろうとしているのか、私には分からない。が、車がビュンビュン通り過ぎる下で、工場が日夜稼働し、人間が行き交うそばで、なにかこれからいのちのドラマが始まるような予感がして、わくわくした。

ずんずん堤防を行くと、岸辺ですばやく反転する鳥が目に入った。胸と腹が白い。一瞬、ツバメか?と思ったが、時期的に早すぎる。胸の黒帯が途切れているところから、シロチドリと分かった。

ハクチョウたちはMさんにえさをもらって食べたあとらしく、三々五々休んでいる=写真。
そこへえさを持った男性が対岸に現れた。目ざとく男性を見つけたハクチョウがそちらへ動きだすと、ほかのハクチョウたちもぞろぞろ後に続く。飛んで近づくせっかち組もいた。
<おい、こら。えさをもらって食べたばかりだろ。人が姿を見せたら、条件反射的にえさをくれると思って体が動くのか。野性の誇りはどこへ行った。情けない>などと胸の中で文句を言いながら、すぐ<そうさせたのは人間。人間が野性をそぎ落としているのだ>と反省する。

ハクチョウたちのいる上空を、海からのして来たカモメが2~3羽舞っている。そうして日中、そこへとどまっている。カモメはハクチョウのえさは食べない。えさのおこぼれにあずかる魚が目当てか。

小一時間でバードウオッチングを兼ねた散歩が終わるころ、キジとウグイスの鳴き声が対岸から響いた。頭上の電線ではセグロセキレイがさえずっている。満足して帰り始めたら小雨がぱらつき出した。ちょうど散歩の時間のときだけ、天は蛇口を閉めていてくれたのだ。

0 件のコメント: