2008年3月31日月曜日

夏井川渓谷の駐車場


夏井川渓谷(いわき市小川町上小川字牛小川地内)を代表する景勝地といえば、「籠場(かごば)の滝」である。滝の上手、県道小野四倉線沿いに去年(2007年)、マイカー用の駐車場ができた。岸辺の杉を伐採し、「かごマット」(昔流にいえば「蛇かご」)で基礎を固め、その上に土を入れてのり面をつくり、路面がきれいにアスファルト舗装された。

ところが9月5日、台風9号が福島県内を襲うと様相が一変した。のり面がえぐられ、アスファルトの路肩がギザギザになった=写真。できてすぐ使いものにならなくなったのだ。

台風9号は山間部を中心に、冠水や土砂崩れなどの被害をもたらした。降り始めからの総雨量が500ミリ近くに達したいわき市三和町は、特に被害が甚大だった。夏井川渓谷にあるわが無量庵の庭でも、桐の木が幹から折れてそばの畑をふさいだ。

で、今年の3月22日夜、牛小川の集落で年度末の総会が開かれたときのこと。
終わって懇親会に移ると、よもやま話が始まった。「籠場の滝」の駐車場が話題に上った。

「あの日(台風9号が来襲した日)の早朝、非常召集がかかって駐車場のそばを通ったら、川が増水して道にひたひたかかっていた」とTさん。
そのあと、そこを通過したKさんは「もう水が道路にあふれていて、怖かった」。
どこまでが川で、どこからが道路か、分からなくなったのだ。

「籠場の滝」のすぐ上流は道路との高低差がわずかしかない。大水が出ると道路が冠水し、魚が泳いでいたりする。「10年に一遍、いや20年に一遍くらいかな、そうなるのは」。T、Kさんが言う。たまたま駐車場ができた直後に、「20年に一遍」の大水が襲った。「造ったらすぐやられた」と別のKさんが応じる。

「『かごマット』をもっと高くすればいいんだよな」が、そのときの結論だった。

福島県いわき建設事務所の釈明はいかに――と言っても始まらない。が、県の技術職員の高度な知識と、地元に住む人間の知恵と経験則がドッキングしていれば、のり面がえぐられるようなことはなかった、ということは言える。

なぜか。3月30日に牛小川へ出かけたら、駐車場に災害復旧工事を告げる標識が立っていた。工事のポイントは「かごマット」を3段に増強することだ。地元の住人が経験的にそうすべきだ、と言っていたことである。

夏井川渓谷は間もなくアカヤシオ(岩ツツジ)の開花時期を迎える。アカヤシオはいわき市の平野部のソメイヨシノとほぼ同時に花を咲かせる(小名浜測候所は3月30日午後、桜の開花を発表した)。ということは、今週末の4月5、6日あたりから夏井川渓谷はマイカー利用の行楽客で込み始めるのだ。

解せないなのは標識に表示されている工事期間である。「3月24日~3月31日」で何ができるのだろう。駐車場はまだ壊れたままの状態。一気に31日に仕上げる?といっても、この雨である。

とにかく夏井川渓谷の花見(むろんアカヤシオ)に間に合うように復旧する、という意志を示しているのだとしたら、それはそれで歓迎すべきことではあるが。

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