2008年3月28日金曜日

山崎の里


私の住むいわき市平中神谷は、夏井川をはさんで平山崎と向かい合っている。

神谷は堤防のそばまで住宅が建ち並び、人がよく堤防を歩いている。私もその1人だ。
対岸の山崎は、神谷とはまったく違って田園地帯である。田畑が広がる中に旧「浄土宗奥州総本山」で「浄土宗名越派本山」の専称寺、その「故本山」の如来寺がある。

山崎の下流、河口までの右岸一帯はいわきの古代文化の発祥地だ。なかでも平下大越の「根岸官衙(かんが)遺跡群」は平成17年7月14日、国史跡に指定された。

四次元の世界で根岸近辺を見れば、「斑鳩(いかるが)の里」が立ち現れる。山崎には中世から近世にかけて、「東北地方の民衆布教の発信地」(圭室文雄明治大学教授)だった一大仏教大学兼文化センターが見えてくる。歴史的にはとてつもないワンダーランドが対岸に展開している。

いずれその説明をするときがあるだろうが、今はのどかな田園地帯から届く「春便り」だ。

神谷側の堤防を歩いていると、決まって対岸の山崎側から鳥の声が聞こえる。
まず、ウグイス。私が初音(初鳴)を確認したのは3月7日。小名浜測候所の生物季節観測では3月9日だから、今年は測候所に勝った。

そしてキジ。朝な夕な、「ケンケーン」と河原で鳴く。27日には姿まで見せた。
「キョシー、キョシー」。変な鳴き声がするので、対岸を見ると、明らかに植物とは異なる黒点が目に留まった。双眼鏡で確かめたら雄のキジだった。

夏井川の流れをスムーズにするため、師走から1月にかけて山崎側の岸辺で竹や木を伐採する工事が行われた=写真。それでできた空き地に現れて、真っ赤な顔とメタリックグリーンの胸を輝かせながら、えさをついばんでいたのだ。

川をはさんでいるから、まったく無防備である。初めてじっくりと雄キジの採餌(さいじ)姿を見ることができた。

それより下流、国道6号常磐バイパスの夏井川橋にいるチョウゲンボウは、私の知る限りでは上下流2カ所の木のこずえに休み場を持つ。一つは神谷側の柳の木、もう一つは大越側の高木。落葉樹だが、樹種は分からない。枝とは異なる黒点がこずえに見えるので、肉眼でもすぐ分かる。それからじっくり双眼鏡で確かめる。

夏井川が澄んでいれば、ウミウだかカワウだかの潜水姿も追える。夏井川は浅い。その上をカワセミがメタリックグリーンの弾丸となって一直線に飛んで行くこともある。

川と河原は生きた水族館であり、鳥類園であり、植物園でもある。

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