2008年3月21日金曜日

尾根の雑木


雑木の生い茂る山は、冬には葉が落ちて、1本1本の木の姿が分かる。「山眠る」、である。
眠っている山は、ある意味では殺風景(色がない)、ある意味ではせいせいしていて(林床まで光が届く)、嫌いではない。夏井川渓谷がそうだ。

裸の森に入って落ち葉を踏みしめながら歩く。仰げば、四方八方に伸びた木の枝が青空に突き刺さっている。その鋭さ、その繊細さ、その不ぞろいさには舌を巻く。
ところが、森全体を眺めるとどうだ。個性的な1本1本の木が、あるリズムをもって調和し合っている。とりわけ、稜線の連なりはほれぼれするほどに美しい。木の高さ、間隔がそろっている。ヒラメの縁側のように=写真(いわき市三和町の雑木林。磐越道の高速バスから撮影)。

私は冬、葉を落としてきれいに並んだ尾根の木々を見ると、必ず「ヒラメの縁側」の直喩に襲われる。それを修正するために、最近は髪の毛を突っ立てる若者のヘアスタイル「ソフトモヒカン」をイメージしようとするのだが、いまひとつしっくりこない。

さて、渓谷のずっと下流、平野部の夏井川では柳が芽吹き始めた。あるかないかのさみどり色が日を追って濃くなり、春光に包まれて躍っている。木の芽は吹き始めると早い。

夏井川渓谷の「ヒラメの縁側」も、あと1カ月もたてば木の芽に覆われて姿を隠す。

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