2012年11月8日木曜日

震災支援


いわき市立美術館で始まった「生誕100年記念 ヴェナンツォ・クロチェッティ展」のトピックは二つ。東日本大震災で被災したいわき市への文化支援として開催されたこと、クロチェッティ財団からいわき市に作品が1点=写真=寄贈されたことだ。

大震災に伴う原発事故で福島県は風評被害に見舞われた。美術館にも影響が及んだ。海外から福島県内(日本そのものだったかもしれないが)への作品持ち込みにブレーキがかかった。が、クロチェッティの国・イタリアは違っていた。支援し、作品まで寄贈した。

恥ずかしながら、クロチェッティという彫刻家を今回初めて知った。「絵は印象派止まり、彫刻はロダン止まり」と揶揄されてもしかたないレベルだ。

今まで見たこともない大胆なポーズ(「岸辺で会釈する少女」)に目を奪われた。ねじれたような足の組み方(「ダンスを学ぶ女性―休息」)、そして圧倒的なリアリティーを持つ小品(「地震」)にも。

「地震」は、若い母親が両腕に幼子を抱え、なにか叫びながら走っている姿を表現している。右腕に抱えられた子は逆さま、左腕の子は肩にかつぎあげられている。その切迫感が東日本大震災に重なる。

「ダンスを学ぶ女性―休息」は女性がいすに座り、足を組んでいるポーズだ。ロダンの「考える人」を連想した。わが家に帰って彫刻の通りに足を組んでみた。できないわけではないが、かなりきつい。「考える人」も前にポーズをまねしてみたがきつかった。

さて、いわき市に寄贈されたのは――。バチカンにサンピエトロ大聖堂がある。クロチェッティが制作したのは、高さ7.4メートル、幅3.8メートルの門扉。その「ひな型」だった。市立美術館の宝がまた一つ増えた。

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