2018年4月10日火曜日

春の水と土の味

 夏井川渓谷の森の中に友人夫妻が住んでいる。一昔前、敷地の一角に「ワサビ田」をつくった=写真。前はミニ水田だったという。
 ワサビ田を訪ねた10年前の記録。4月中旬というから、ちょうど今ごろだ――。夏井川渓谷の隠居にいると、夫妻が採りたての花ワサビと、茎を刻んで味をつけた「酒のつまみ」を持って来た。ピリリとした辛さのなかに甘みが漂う「酒のつまみ」は、春だけのぜいたくな逸品。カミサンがつくり方を教わった。わが家へ帰ると早速、「酒のつまみ」が出た。

 後日、森の中の家を訪ねた。そばの沢は竹林になっている。イノシシがタケノコを掘った跡が生々しかった。お土産にタケノコとクレソン、若いワサビの茎をもらった。

 それから10年――。ダンナ氏がフェイスブックにワサビ田の写真をアップし、「わさびの花が真っ盛り! 花の漬物のレシピ入りで知り合いに配っている」とコメントしていたので、思わず「葉ワサビ、大好き」と応じたら、「取りに来なよ、ご近所さん!」と返ってきた。それだけでなく、その日のうちに平のわが家へ花ワサビとレシピが届いた。ありがたや、ありがたや。

 花ワサビの漬け方と食べ方はこうだ。①洗ったら3センチくらいに切る②ザルに入れて70度くらいのお湯をかけ回す(あまり熱いと苦みが出る)③お湯を切り、ビニール袋に入れ、塩か醤油を入れてよくもむ(これで辛さが出る)④袋に入れたまま水を張った器に入れて冷まし、冷蔵庫で保管する⑤小出しで食べる(空気に触れると辛くなくなる)――。
 
 カミサンが早速、レシピに従って「酒のつまみ」をつくった。春の水と土の味を堪能した2日後、しばらくぶりに森の中の家を訪ねる。また花ワサビとミズブキ、クレソン、ニンジンをちょうだいした。
 
 わが隠居でも、庭木の下で葉ワサビの増殖を試みたことがある。道路沿いのためか、たちまち行楽客に盗掘された。庭のタラノキもばっさりやられた。10本ほど挿し芽したタラノキは、それであらかた立ち枯れた。今は、地下茎を伸ばした先に幼樹が4、5本残るだけ。先日、侵入者にとられるよりはと、若い芽を摘んだ。
 
 アカヤシオ(岩ツツジ)の花が満開の日曜日、わが隠居のある集落・牛小川でお祭り(寄り合い)が開かれる。今年(2018年)は4月15日だ。ときどき花ワサビのおひたしが出る。住民のTさんが秘密の場所に植えたら増えた。牛小川ならではの、春のごちそうだ。花ワサビは漬物だけでなく、おひたしもいいかもしれない。ツンと鼻に抜ける辛みがたまらない。

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